~上場・IPOを見据えて準備しておくべき七つのこと~ベンチャー企業に贈る労務管理スタートアップガイド【弁護士監修のチェックシート付き!】

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公開日:2016.11.4

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コーポレート・ガバナンス、コンプライアンスという言葉は、総務に携わる人で聞いたことがない人はいないでしょう。いまや上場企業や大企業だけではなく、これから上場・IPOをしようとしている中小・ベンチャー企業にも遵守徹底が求められる時代となりました。

実際、取引所や主幹事証券会社による上場審査では、財務諸表や事業計画に基づく経営状況とともに、コーポレート・ガバナンスやコンプライアンスの遵守が評価の対象になっています。長時間労働や過労死などが社会問題化している今日では、とりわけ労務管理のトラブルや違法性の有無は厳格にチェックされます。

そこで本資料では、上場を目指す中小・ベンチャー企業に向けて、上場審査でよくある労務管理上のトラブルを取り上げます。また弁護士の飛岡依織氏へのインタビューを通して、来る上場に向けて事前に準備すべきことを紹介します。

 

上場審査の成否は、労務管理にかかっている?

東証一部・二部では、「上場審査の内容」で「コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が適切に整備され、機能していること」としています。マザーズにおいても東証一部・二部より緩やかな表現ながら、「コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が、企業の規模や成熟度等に応じて整備され、適切に機能していること」を明記しています。

コンプライアンスの中でも、労働関連法規の遵守は特に重要です。特に、「取引所よりも審査が厳しい」と指摘されることもある主幹事証券会社による審査の段階で労務管理上の問題が発覚すると、業績や財務状況が好調であっても、IPOの延期や断念を余儀なくされてしまいます。

 

上場審査でよくある労務管理上のトラブル

次に上場審査でよくある労務管理上のトラブルについてみていきます。

トラブル1:未払い賃金の発生

労務管理上のトラブルで最も多いのが「未払い賃金の発生」です。未払い賃金は、次のような原因によって発生します。

未払い賃金が発生する原因

①従業員の労働時間や残業状況を管理できていない

未払い賃金が発生する要因としてまず挙げられるのが、そもそも従業員の労働時間や残業をきちんと把握・管理できていないケースです。就業形態や勤務スタイルが多様化した今、かつてより従業員の労働時間を正確に把握することは難しくなっています。そこで定額で残業代を決める見なし残業代(固定残業手当)制を取り入れている企業も少なくありません。しかし見なし残業は、判例の示す要件を満たさない場合には無効と判断され、みなし残業代を含んだ金額を基礎に、改めて時間外労働や休日・深夜労働に対する割増賃金を支払わなければならなくなるケースもあります。またベンチャー企業などに多いサービス残業も、上場審査では、場合によってはメールの履歴やPCのログ等も考慮した上で厳しくチェックされます。

 

②残業代の計算が間違っている

今日では、正社員、契約社員、パート、アルバイトと、就業形態が多様化しました。また労務関連の法改正も頻繁に行われています。そのため、給与計算や残業計算が非常に複雑になってしまっているのが実情です。認識不足や単純ミスで計算を間違えてしまい、気付かぬうちに未払い賃金の発生しているケースも少なくありません。

 

③年俸制や裁量労働の問題

最近は年俸制や裁量労働制をとることで、残業代を支払わない企業もあります。しかし、裁量労働制や年俸制を採用しているからと行って、残業代が全く発生しないわけではありません。この点について誤った認識をもっている企業も少なくなく、また手続きの不備や運用に問題がある場合、法的に認められず未払い賃金の支払いが求められる可能性もあります。

 

未払い賃金のリスクを知ろう

このような理由で、上場に向けた準備や審査のなかで未払い賃金が発覚し、支払義務が発生することは珍しくありません。未払いの賃金があると発覚した場合、企業はすでに退社した社員も含めて2年分はさかのぼって未払い賃金を支払わなくてはならず、企業にとっては債務が膨らみ財務状況も悪化します。未払い賃金が多額であれば、当然財務状況に与える影響も大きく上場が困難になる可能性も高まります。

従業員の労働時間をきちんと管理できていない場合には、PCのログや標準的な労働時間から残業時間を合理的に算出しなければならない場合もあります。その手間とコストも、かなりのものとなってしまいます。

 

上場を目指すベンチャー企業なら見逃せない労働基準法の改正

労働基準法では、従業員に60時間を超える法定時間外労働を行わせた場合、50%以上の割増賃金を支払うことが義務づけられています。この割増賃金の支払いについて、これまでは中小企業に対しては猶予措置がとられていました。

しかし、次の国会で労基法改正が成立すれば、平成31年4月1日より※、この猶予措置が撤廃されることが予定されています。その結果、中小企業であっても、60時間を超える法定時間外労働を行わせた場合、50%以上の割増賃金を支払わなければなりません。労務管理を適切に行っていないと、平成31年4月※以降は未払い賃金(=債務)の総額が、今より大きく膨らんでしまう可能性があるので注意が必要です。

※平成27年通常国会にて提出された改正法案において

 

トラブル2:就業規則と現実との乖離

急激に成長したベンチャー企業の場合、就業規則が実際の就業状況と乖離しているケースが珍しくありません。書籍やウェブなどのサンプルをもとに就業規則を定めている企業も多く、規則がきちんと運用できていないことが多いのが現状です。就業規則が関連法規に則していない場合や、実体とそぐわない「絵に描いた餅」では、主幹事証券会社の審査を通過することはできません。

 

トラブル3:派遣社員・アルバイト・パートが社会保険に未加入

正社員ではないアルバイトやパートも、一定の条件を満たしている者について企業は社会保険に加入させる義務があります。しかし企業側の認識不足で、社会保険に加入させるべきアルバイト・パート従業員を加入させていないというケースが少なくありません。そのような場合も法令違反となり、事態を是正しなければ上場審査を通過できません。

 

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