楽しいを仕事に!リモートワークに必要なのは“環境”と“人間関係”~株式会社ゲイト【後編】~

カテゴリ:インタビュー 投稿日: 2017.4.10 tag: ,

労働人口の減少、労働生産性向上の課題など、労働に関して様々な問題を抱えている日本で、新しい働き方として注目されている「リモートワーク」。

【前編】では、リモートワークを活用している株式会社ゲイト(東京都墨田区, 以下、ゲイト社)の代表取締役、五月女圭一氏(以下、五月女氏)と、三重県桑名市在住、フリーランスで五月女氏の社長秘書として働いている福田ミキ氏(以下、福田氏)に、リモートワーク導入までの経緯や、その背景にあった五月女氏の働き方に対する考えを紹介しました。

後編では、リモートワーク導入後の変化や、福田氏がリモートワークの経験を通じて感じていること、リモートワークで使っているツールを紹介し、これからのリモートワークのあるべき姿について考えていきます。

 

リモートワーク導入後の働き方

 

リモートワークを導入してから、福田さんはどのような働き方をしているのですか?

福田氏:クライアントさんや自分の都合に合わせて柔軟に対応可能なのですが、基本的に9時から18時で営業をしています。

桑名の事務所には私を含めて、3名のフリーランスの女性がいます。普段は8時半頃から出勤し、9時までの間にコーヒーを飲んだり新聞を読んだりして比較的リラックスして過ごしています。

お昼の休憩に関しても、仕事の進捗や自分のお腹の空き具合に合わせて昼食を取っています。そして、18時以降は主に「OTONAMIE」というウェブマガジンの仕事をしています。

ウェブマガジンの方で日中に打ち合わせが入るなどしたらその都度柔軟に調整できるので、フリーランスの契約にしてからこのような自由な働き方がしやすくなりました。

 

―福田さんの事務所には福田さんの他にもフリーランスの方がいらっしゃるようですね。福田さんの他にどのような方が働いているのですか?

(三重県桑名市にある福田氏の事務所)

 

福田氏:今桑名の事務所では、2人の女性が働いています。お子さんがいるため、出勤時間も帰る時間もまちまちです。女性同士で情報交換もできるので、仕事の繋がりだけではないコミュニティが形成されています。

「社会に混じって活動している」と実感できることや、自分の働く場所を自分で築けることは、子育てをしながら働く女性にとっても大事なことだと思います。

また最近では、いろいろな方が桑名の事務所へ遊びに来るため、自由に使えるパソコンを1台設置しました。同じようにリモートワークで働いている女性がこの事務所へ通うようにもなりました。

五月女氏:桑名の事務所はそのうちコワーキングスペースのようになっていくものだと思っています。現在桑名にはそういう場所が少ないので、桑名の事務所がその先駆けとなれるのではないかと考えています。

働く女性にとって、仕事と子育てを両立できる職場環境はとても重要ですよね。それと同時に、子育て中の女性にとっても、社会への帰属意識は精神衛生上必要なのでしょう。ミキさんが見つけたこれらを同時に見たす解は、フリーランスとして事務所を構え、同じような境遇の人達と一緒に働くということでした。これによって女性同士の交流を行いながら、仕事にもきちんと取り組むことができるようになりました。

 

一方で、何かデメリットはあるのでしょうか?

(リモートワーク導入直後の福田氏の事務所)

 

福田氏:事務所を借りて始めた当初は孤独だったことです。今は、3人で事務所をやっているので楽しく過ごせていますが、スタート時は1人で桑名にいて、他の方は皆東京の本社にいたので孤独でした。

そこで「Appear.in」等のWEBミーティングツールを常時繋ぐことにしました。仕事の打合せは勿論のこと日常会話もできて孤独ではなくなりました。ただ画面越しにお酒を一緒に飲んでみたのですが、空気感を共有できず、全然盛り上がらなかったです。(笑)

五月女氏:ミキさんが、1人で過ごす時期を乗り越えてくれて本当に良かったと思っています。今では働く仲間が集まってきてくれましたが、2年間ずっと1人だったら、いつの間にか音信不通になってもおかしくないと思います(笑)

最初の頃、パソコンをセッティングするという名目で、本社メンバーを桑名へ送ったこともありました。その本当の目的は、ミキさんとコミュニケーションを取り、信頼関係を築くことでした。そのようにコミュニケーションを取って関係性を構築することは、リモートワークの受け皿となる側としての義務なのではないかと思います。

 

リモートワークと聞くと最新技術を用いて効率的に・無機質に仕事をするというイメージが先行しますが、福田さんのリモートワークが成功した背景には、人間関係を重んじ、ひとつのチームとして事業を進めていくというゲイト社の本質的な考え方があったのでしょうね。

 

リモートワークを支えるツールを紹介

 

リモートワークでは実際にどのようなツールを使っているのですか?

五月女氏:パソコンは基本1人あたり4台、ミキさんは上級者なので6台使っています。ワンタスクもしくは1企業1パソコンで業務に集中できるような環境を作っています。会議などはこの「Appear.in」というツールを使っています。スクリーンシェアなど、何でもできてとても便利ですよ。

福田氏:スタディスト社のマニュアルツール「Teachme Biz」も使っています。一から十まで教えなくても「これをやってください」とマニュアルを渡すだけで仕事を振ることができます。「ノートを取るなら、Teachme Bizに追加する」という形で進めているので、マニュアルも改善していっています。その他にも、リモートワークを潤滑に進めるために様々なサービスを導入しています。

・オンライン会議:Appear.in

・チャット:ChatWork

・スケジュール管理:Google カレンダー

・クラウドサービス:Google Drive

コミュニケーションツールとして「Apear.in」や「ChatWork」は非常に便利です。特に「Appear.in」はブラウザサービスなので特別なソフトウェアをダウンロードする必要もなく、スマートフォンからでも使えるため非常に使いやすいです。

またGoogle全般、特にカレンダーやドライブは重宝しています。1つのクラウドに対して色々なところからアクセスができたり、同じファイルを同時に編集できたりするのでリモートワークにはとても便利です。

その他、業務効率化という観点から、

・スクリーンショット:WinShot

・Webデータベース構築サービス:Kintone

・問い合わせ窓口の一元管理サービス:Zendesk

・遠隔操作サービス:TeamViewer

なども使用しています。

 

五月女氏:どのツールも使いやすく、それぞれの良さがあります。そのため、そのツールが自分たちの働き方に適合しているかという点を考慮し、どのツールを導入するか検討することが重要だと思います。

そして、まずはどのツールも実際に使ってみることをお勧めします。今はますます技術が進歩していくので、ツールは固定せずに、新しいものを使ってみて、良さと特徴を理解して取り入れていくことが大事だと思います。「このツールは非効率だな」と少しでも感じたら、すぐにそのツールを使うのをやめて、新たなツールを取り入れる方が効率的な場合もあります。

福田氏:実際、ゲイトでもクライアントさんでも、ツールをガラッと変える瞬間は何度か経験しました。

五月女氏:「勇気を持って変えること」は、重要なソリューションの1つだと思います。実際、捨てることや変えることが苦手な企業は多いと思います。捨てたあとの方法に慣れれば、今まで何故これを使えていたのだろうと思ってしまうほどです。

そのように、今までの固定観念をブレイクすることが大事です。実際、リモートワークについても「ノートパソコン1台で在宅勤務するものだ」と一般的に思い込まれていて、そのような固定観念が邪魔をしているから一歩を踏み出せずにいるのだと思います。これはブレイクしなくてはならない固定観念だと思います。

 

これまで慣れてきたやり方を全部捨てて新しい方法を模索するのは億劫に感じる方も多いでしょうが、それによって画期的な方法が生まれるのですね。そのためには、「まず使ってみる」ことが重要であり、その前提として、これまでの凝り固まった固定観念を取り払う必要性が重要なのでしょう。

 

今後のリモートワークに必要なこと

 

リモートワークやテレワークと言った言葉は近年取り沙汰されることがとても多いようですが、世間で注目されているほどリモートワークが普及しているようには感じられません。リモートワークは何故普及していないのだと思いますか?

五月女氏:端的に、実施する気がないのだと思います。理論上はできると分かっていても、実行に移さないから普及しないのでしょう。先程も言いましたが、まず初めにやればいいのです。

その次に、仕事ができるような環境を作ることです。やはり、働く環境が整っていない「在宅ワーク」では上手くいかない、と私たちは結論付けています。

福田氏:私も実際に、事務所の通信環境が整うまでの期間は、自宅でノートパソコンを使って仕事をしていたので、いかに自宅が仕事向きではないかよく分かっています。雨が降ってきたら洗濯物を取り込まなくてはいけないし、宅配も来るし、回覧板も回ってくるし、やたら小腹が空きます(笑) テレビも誘惑してくるし、眠くもなります。 実際にやってみると分かるのですが、自宅だと様々な邪魔が生じます。

なので、今は自宅ではなく事務所で、そして1人につきパソコン4台を用意して仕事をしています。ワンタスク、もしくは1企業につき1つのパソコンにして、業務効率を上げるためです。仕事をする上で環境がいかに大事か分かりました。

五月女氏:一緒に働く上で、仕事を依頼する側が「環境を作る」ということを率先して行わないといけないと思います。今のパソコンの設備投資も、知らない人から見たら「馬鹿じゃないの?」と思うかもしれないですし、実際に社内でも最初は理解されませんでした。だからこそ、このような新しい取り組みは決定権を持つ人が、反対意見には目をつぶって、良い方向に向けて進めていくしかないと思います。

 

このようにリモートワークは、パソコンを準備してしまえば簡単に始められると思います。ただ、ネット環境の整備等、地域ならではの事情に慣れることも大事です。

福田氏:私自身も、環境やスピード感については、東京で仕事をしていた頃とは感覚を変えなくてはならないと実感しました。ゲイト社は、そのような地域独特の事情にも理解があったので、仕事がしやすかったです。

 

リモートワークを実践する上で、職場環境がとても重要であることが分かりました。しかし、一般的に理解されているリモートワークとは、在宅ワークのように少ないコストで行うことだと思われているようです。五月女さんが率先してこのような固定観念を壊し、積極的にリモートワークの環境や設備に投資をすることによって、リモートワークの最適解を見つけ出すことができたのですね。

 

リモートワークを実践して感じた”想い”

 

では、実際にリモートワークを導入した経験を通して、リモートワークを導入する上で大事なことは何だと思いますか?

五月女氏:まず、考え方として、お互い理解して努力し合う関係性でない限り、リモートワークは進まないと思います。

福田氏:そうですね。私たちの仕事を事務というカテゴリーでくくって、「どうせ事務でしょ」という安易な考えを持っている会社では取り組みが進まない気がします。

五月女氏:「お金は払うから雑務をやっておいて!」という感覚でリモートワークを依頼できると考えている方はたくさんいるのですが、そういう方にミキさんの仕事を「事務代行」などと言われると頭に来ます。

福田氏:今女性の働き方改革が叫ばれ、結婚や出産などを機に仕事を辞めた女性が育児や家事と両立してできる仕事を、提供する企業も増えてきています。そういった女性に対して「空いた時間に片手間でこの仕事をお願いしますよ」というアウトソーシングのような形で行なわれているリモートワークに対して、私は少し違和感を覚えています。

仕事を依頼する側の企業が、働く相手との関係性を構築していく気持ちがない場合や、仕事をする側がただ空いた時間に事務やパソコンワークをやってお金を稼ごうと考えている場合は、本当の意味でのリモートワークとは違うと思います。

現在は、そういった女性の労働力を単なるアウトソーシング先としか見ていない企業が多いなという印象です。働く側としても、そのような働き方では、働く意義や充足感を感じることが少ないはずです。

このように、リモートワークにおける人間関係を重視しない企業が、デスクワークを全てリモートワークに任せ、結局うまくいかなかった場合に、「リモートワークはダメだ」と諦めてしまうのはすごく悔しいと思っています。やはり、企業全体で目標や価値観を共有して、「もっとリモートワークを改善・発展させていこう」という意識を持ち続けることが大事だと思います。

 

五月女氏:もちろん、働く側もプロ意識がないとダメだと思います。お金が欲しいからやる、というのではなく、仕事に誠心誠意取り組む姿勢が必要です。その上で、ミキさんも言っている通り、やはり、お互い理解し合うことが一番大事だと思います。

福田氏:普段は離れていても、近くに来たら「一緒にご飯に行こう」と言えるような関係性がいいですね。物理的に距離は離れていても、心理的距離は近い関係であるべきです。

五月女氏:それくらいの信頼関係がないとリモートワークはできないと思います。桑名で働いている方々は社長直轄の、「ゲイト社の働き方を変えるための最先端の部隊」だと捉えています。「わざわざ離れた場所から遠隔で組織や働き方を変える」というチャレンジは、やはり相当な信頼関係がないとできません。

また、リモートワークでは勤怠管理が難しいのではないかという意見も聞きます。しかし、勤怠管理というのは、管理する側の理論でしかないと思っています。お互いの信頼関係があれば、勤怠など管理しなくても質の高い仕事ができます。お互いの信頼が薄く、「管理する側・される側」という関係だと、リモートワークでの仕事はうまくいかないのではないでしょうか。

ただ、いきなりリモートワークを取り入れ、勤怠管理をなくすというのが難しい企業ももちろんあると思います。その際は、まずクラウド型の勤怠管理システムを取り入れるというのも、1つのソリューションだと思います。働き方を変えようとして、勤怠管理の面倒さに問題意識を感じた時に、勤怠管理そのものを廃止するというイノベーションもあると思いますし、

新たな勤怠管理システムを取り入れて、手間のかからない効率的な勤怠管理に変えるという方法もあると思います。それは、組織によって解決方法が異なるので、どれでもいいと思っています。

何より大事なことは、自分たちなりに、今の働き方ではダメになると認識し、少しでいいから歩みを進めることだと思います。働き方改革の本質もそこにあると思っています。今後、日本の働き方改革が進むかどうかは、企業が労働の現場を見つめ直して正しく現状を認識し、新しい一歩を踏み出すことができるか、という点にかかっていると思います。

 

編集後記

ゲイト社において、リモートワークは「ただの事務代行」や「時間の切り売り」ではなく、働き方を変えるための最先端の取り組みである、ということがお分かり頂けたかと思います。そして何よりもリモートワークは、コミュニケーションを密にとって、お互いを理解し合い、信頼関係を築くことが大事であるということがしっかりと伝わったのではないでしょうか。

また、今後労働人口が減っていく中で、女性の働き手は社会的にニーズが高まることが見込まれます。その際、福田氏が言うように、企業側の女性労働力に対する捉え方を再考することと、女性側の労働に対する意識を高めていく必要があるはずです。そして、女性に限らず労働者の「働き方改革」が求められている現在、まずは現状を認識し、少しずつでも変えていこうとする姿勢が大切です。

ゲイト社は、桑名市に事務所を構えたあと、山梨県や三重県熊野市にも新たにリモートワークの事業所を設置したとのことです。ゲイト社の例が示しているように、きちんとした整備を整え、関係性を密に保つことができればリモートワークはとても有効です。これを機にリモートワークに注目し、働き方改革を検討する一助としてはいかがでしょうか。

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