ダイナミックケイパビリティとは?激しく変化する社会情勢に対応していくための経営理論を理解しましょう

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公開日:2023.1.25

ダイナミックケイパビリティとは、企業の周りの環境の変化に対応するために、企業自ら変革する能力のことを指します。変化が激しく、将来の不確実性の高い現代において、企業はその変化に常に対応していかなければ生き残ることはできません。このような現代において、変化を柔軟に受け入れるダイナミックケイパビリティは必要不可欠なので、その概要について成り立ちとともに理解しましょう。今回は、ダイナミックケイパビリティの背景にある2つの理論と、ダイナミックケイパビリティを構成する3つの要素、ダイナミックケイパビリティが注目される背景と導入事例について詳しく解説します。

ダイナミックケイパビリティに関心が向けられている

ダイナミックケイパビリティとは

ダイナミックケイパビリティとは環境や状況が日々激しく変わるなかで、企業が変化に対応して自己変革を行う能力を指す言葉です。カリフォルニア大学バークレー校のデイヴィッド・J・ティース氏によって提唱された戦略経営論として広まりました。環境に適応して組織を柔軟に変化させる力は、現代を生き抜くために欠かせないため、ダイナミックケイパビリティを高めようとする企業が増えています。

ダイナミックケイパビリティのベースとなった2つの理論

「競争戦略論」と「資源ベース論」の2つの理論が、ダイナミックケイパビリティ誕生の背景にありました。それぞれの概要について解説します。

  • 競争戦略論
    競争戦略論は産業構造や業界の状況が企業の戦略行動を決定し、企業の業績をも決定するという考え方です。この理論では、コストリーダーシップ戦略・差別化戦略・集中戦略という3つの基本戦略が用いられます。この競争戦略論はマイケル・E・ポーター氏によって提唱されました。
  • 資源ベース論
    資源ベース論は業界が同じ企業の競争力の違いは、保有している経営資源の異質性によって生まれるという理論です。経営資源の例としては人材・ブランド・ノウハウ・特許などが該当し、企業の競争優位性の獲得に対して重要な要素だと考えられています。この資源ベース論はB・ワーナーフェルト氏によって提唱されました。

ダイナミックケイパビリティの3つの要素

ダイナミックケイパビリティは「感知」「捕捉」「変革」の3つの要素で構成されています。それぞれの考え方を見ていきましょう。

  • 感知(Sensing)
    感知とはお客様のニーズや競合他社の動向を観察・分析して、発生しそうな脅威や危機を察知する能力です。より具体的には研究開発やマーケティング調査などの活動が該当します。
  • 捕捉(Seizing)
    捕捉とは機会を捉えて企業の資産・知識・技術を再構成して、競争力を獲得する能力です。感知で見つけた機会に対して組織の最適化を行うともいい換えられます。ビジネスモデルやアウトソーシングの判断など、変える変えないの基準を明確にします。
  • 変革(Transforming)
    変革とは競争力を継続的なものにするために、組織全体を刷新して変容する能力です。例えば、組織構造を組み替えや社内ルールの変更などが該当します。

   

ダイナミックケイパビリティが注目される背景とは

不確実なグローバル時代

VUCAと呼ばれる不確実な今の時代を生き抜くために、ダイナミックケイパビリティが注目されています。VUCAとは将来の予測が困難な状況を示す造語です。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取って誕生しました。インターネットによって結ばれた社会では、情報共有のスピードが高く事業環境もすぐに変化します。そうした今の時代を生き抜く力として、ダイナミックケイパビリティが求められているのです。

技術革新

DXなどのデジタルの技術革新への対応にも、ダイナミックケイパビリティが必要とされています。DXはDigital Transformationの略で、デジタルによる変容と訳せる言葉です。デジタル技術の活用による生活やビジネスの変容がDXに該当し、実際に多くの変化が起きています。例えば、AI・RPA・電子化の推進など、職場で変化があった方も少なくないはずです。こうした技術革新に上手く対応できない企業も増えており、ダイナミックケイパビリティが注目されています。

市場とニーズの変化

市場とニーズの変化への対応も求められます。例えば、新型コロナウイルスの影響で私たちの生活は大きく変わりました。このような状況の中、事業で苦労する企業が目立つ一方、Eコマースなど大きく成長したサービスも存在します。このように市場と顧客ニーズは日々変化しています。今までの方法が継続していつまでも有効とは限らないのです。移り変わる市場とニーズに対応するためにも、ダイナミックケイパビリティが求められています。

   

ダイナミックケイパビリティの導入事例

富士フイルム株式会社

富士フイルム株式会社は、急速なデジタル化をダイナミックケイパビリティの活用で実現した企業です。国産フイルムを推進した企業として富士フイルム株式会社は有名ですが、現在では写真・医療・印刷事業におけるデジタル化にもいち早く対応しています。背景としては株主価値や利益最大化ではなく、いかにして生存するかを重視して考えたといいます。ゼロ利益を避けるために、ダイナミックケイパビリティを積極的に利用したのです。既存の技術や知識資産を徹底的に再利用して、新しい知識や技術の開発が進められました。少しでも見込みあるビジネスがあれば保有資金を投入したことが、今の主力ビジネスにつながっているといいます。

IKEA

IKEAはダイナミックケイパビリティが高い企業として有名です。IKEAは日本でも人気のある世界的な家具ブランドですが、元々はスウェーデンの小さな通販会社でした。当初は家具を取り扱っていませんでしたが、顧客からの需要にすぐに対応し販売をスタートさせました。競合との価格競争でも、商品の質を落とさずに価格を抑える方法が考えられました。そこで、今では一般的な組み立て前の家具パーツの販売を主流にさせたのです。IKEAはこのように変化に対応する力に優れています。家具の自社生産や倉庫型店舗といった今のスタイルも、優れたダイナミックケイパビリティによって誕生させたのです。

株式会社ディー・エヌ・エー

株式会社ディー・エヌ・エーはダイナミックケイパビリティによって成長を遂げました。株式会社ディー・エヌ・エーはオークションサイトであるビッターズから始まった企業です。その後はゲーム・Eコマース・スポーツなど幅広い事業を拡大し、多角化企業としての地位が築かれました。IT企業として誰もが聞いたことのある企業まで規模を拡大できた背景には、高いダイナミックケイパビリティが欠かせません。近年では全社横断的なAI推進が進められており、AIシステム部とAI戦略推進室が設置されたそうです。AI時代に適応すべくいち早く行動を起こされました。株式会社ディー・エヌ・エーの強みである高い技術力が積極的に組織変革に活かされています。

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まとめ

企業はさまざまな変化に対応していかなくてはなりません。トレンドの移り変わりも激しく、流行を逃すと大きな打撃を受けてしまうケースも増えてきました。企業に対しても悪い情報が出回れば、大きな影響が生じる例も目立ちます。こうした状況でスマートに対応していくためには、ダイナミックケイパビリティが大切です。企業自ら変革できる能力に優れていれば、困難な状況も打ち破れる可能性が広がります。保守的な考えだけでなく、時にはダイナミックケイパビリティを意識して事業を進めてみましょう。

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