安心して契約を進める!請負?準委任?業務委託契約のポイント大公開

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公開日:2017.4.7 最終更新日:2024.2.6

自社の業務を他社にアウトソーシングするとき、「業務委託契約」を結ぶことになります。業務委託契約は、委託する業務内容や委託方法によって「請負契約」や「準委任契約」に分けられますが、これらは法的性質が異なることから、適切に契約を締結しないとトラブルの原因となる可能性があります。
今回は、業務委託契約の法的性質や労働者派遣契約との違い、契約締結にあたり押さえておくべきポイントについて解説します。

業務委託契約とは

業務委託契約とは、自社の業務を外部の第三者に委託する際に締結する契約のことをいいます。契約の対象となる「業務」は、システム開発業務やコンサルティング業務、オフィス清掃業務など範囲が幅広く、業務委託契約は企業において締結される頻度の高い契約だといえます。
業務委託契約は、委託する業務内容や委託方法によって「請負契約」や「準委任契約」などに分けられますが、これらはそれぞれ法的性質が異なります。

請負契約

請負契約は、「仕事の完成」を目的とした契約のことをいいます。例えば、建設業者に建物の建築を委託する場合などは請負契約が締結されます。
仕事を請け負った側(請負人)は、成果物を引き渡すなど仕事を完成させる必要があり、仕事を完成させなければ報酬を得ることはできません。
また、仕事の完成後に成果物等に欠陥が見つかった場合、請負人は、その修補を行う責任を有します。

準委任契約

準委任契約は、「事務の処理」を目的とした契約のことをいいます。例えば、自社ホームページの日常的な保守管理業務をIT企業に委託する場合などは準委任契約が締結されます。
事務を委任された側(受任者)は、委任された事務について相応の注意をもって処理する義務を負いますが、仕事の完成義務は有しません。したがって、事務処理の結果が事務を委任した側(委任者)の意に沿わないものになったとしても、受任者は報酬を得ることができます。

請負契約と準委任契約の法的性質の違い

 請負契約準委任契約
目的仕事の完成事務の処理
受託者の義務仕事を完成させる義務善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務(善管注意義務)
報酬請求権仕事が完成し、委託者の意に沿う結果が生じなければ報酬を得ることができない委任された事務が処理されれば、委託者の意に沿う結果でなくても報酬を得ることができる
報酬の受取時期仕事が完成しなければ報酬を受け取ることができない事務処理の途中で契約が終了しても、報酬を受け取ることができる
成果物ありなし
報告義務なしあり

委託者の請求があるときは、いつでも事務処理の状況を報告しなければならない

契約解除権受託者からは、途中で解除できない

委託者からは、仕事が完成するまでは、いつでも損害を賠償して契約を解除できる

委託者・受託者ともに、いつでも契約を解除できるが、相手方の不利な時期に解除した場合は、相手方の損害を賠償しなければならない

労働者派遣契約との違い

労働者派遣契約と業務委託契約は、業務を依頼する事業主と業務を行う労働者が直接の雇用関係にないという点で共通しています。
しかし、両者の間では指揮系統の観点で明確な違いがあります。労働者派遣契約の場合、労働者は派遣元の事業主と雇用契約を結んでいますが、派遣先は労働者に対して業務についての指揮や命令を行うことが可能です。ここでは、派遣元の事業主は派遣先に対して労働力を提供していることになります。
一方で業務委託契約の場合、請負業者が注文主に対して提供するものは、労働の結果としての仕事の完成になります。この場合、注文主と労働者の間には指揮命令関係がないことに注意しましょう。

2020年民法改正での変更点

明治時代に作られていた民法が120年の歴史の中で初めて改正されました。改正民法で変更された業務委託契約のポイントが2点あります。

  • 瑕疵担保責任が指す内容の明確化

瑕疵担保責任とは、請負人の成果物について委任者が知らない欠陥があった場合に、請負人が負う責任のことを指します。改正後は曖昧な「瑕疵」という表現から「契約不適合」へと変わり、委任者は履行の追完の請求や損害賠償請求、契約の解除、代金減額請求などをできることが明記されています。

  • 帰責事由による賠償責任の有無

次に、請負人を守るルールとして帰責事由に関する記載がなされています。従来は、請負人の過失がなくても瑕疵担保責任が課されて損害賠償責任を負っていましたが、改正後は帰責事由がある場合に限って損害賠償責任を負うようになりました。

 

業務委託契約で起こりうるトラブル

ここまで見てきたとおり、一口に「業務委託契約」といっても請負契約と準委任契約では法的性質がそれぞれ異なることから、これらの違いを認識せずに契約を締結した場合、思わぬトラブルが発生する可能性があります。
例えば、自社製品の営業・販売をX社に委託したとしましょう。この契約が「請負契約」であった場合、仕事の完成が必要であることから、製品が実際に売れなければX社の報酬は発生しません。
一方、「準委任契約」であった場合は、営業活動を行うこと自体が報酬の対象となることから、仮に製品が1つも売れなかったとしても、X社に報酬を支払うことが必要です。
このように契約形態の違いは報酬支払義務等に深く関わることから、業務委託契約を締結するにあたっては、当該契約が請負契約か準委任契約かを明確化しておくことが重要です。

 

業務委託契約を締結するにあたってのポイント

業務委託契約を締結するにあたっては、下記のポイントについても押さえておくようにしましょう。

業務内容・業務範囲

委託する業務の内容や業務範囲をきちんと明確化しておくことが重要です。ここが明確に定まっていないと、委託者と受託者の間で「依頼した業務が行われていない」「そんな業務は依頼されていない」などといったトラブルが生じてしまう可能性があります。

報酬の発生、支払期日・支払方法

何に対していくらの報酬が発生するかを明確に定めておくようにしましょう。また、報酬の支払いはいつまでに必要か、分割払いか一括払いか、前払金は必要かどうかなども定めておくようにしましょう。

諸費用

委託された業務を行うにあたり、旅費や通信費等の費用が発生する場合があります。これらの諸費用について、どちらがどの範囲まで負担するのかを決めておくようにしましょう。受託者から委託者に対して諸費用の請求を行うことができるとする場合には、その方法についても定めるようにします。

知的財産権

委託された業務の成果物等に、著作権などの知的財産権が発生する場合があります。発生した知的財産権は委託者と受託者のどちらが取得することになるのか等、知的財産権の取扱いについても明確に定めておくようにしましょう。

損害賠償

万が一損害が発生した場合に備え、責任の範囲や責任を負う期間、賠償金の上限などを事前に決めておくようにしましょう。

 

まとめ

業務委託契約は、企業において締結する頻度の高い契約だといえます。予期せぬトラブルを防止するためにも、業務委託契約を締結する際には、請負契約と準委任契約の法的性質の違いについて正しく理解するとともに、あらかじめ取り決めておくべき事項をきちんと定めておくことが大切です。

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