【2020年4月施行】改正民法でバックオフィス担当者が押さえておくべきポイントとは?

カテゴリ:コラム 投稿日: 2019.11.19 tag: ,

明治時代に作られた民法が120年を経て初めて全般的に見直され、2020年4月に改正民法が施行されることに決まりました。200項目にも及ぶ改正事項の中には、瑕疵担保責任の変更や短期消滅時効の廃止、定型約款に関する規律の制定、保証契約の見直しなど、バックオフィス担当者が必ず知っておくべきポイントが多くあります。今回は、民法改正の概要、民法改正が企業に与える具体的な影響とそれぞれへの対処法について解説していきます。

民法改正の概要

長年の議論が結実した今回の民法改正は、「平成の大改正」とも呼ばれます。1894年に現行の民法が制定されて以降、これまで全般的な改正は行われてきませんでした。しかし、民法制定から100年以上が経ち、社会経済の変化に伴って取引形態も多様化・複雑化したことから、現行民法では対応できない事態が多々生じるようになっています。そこで法務省が2006年に全面的な改正を打ち出し、約8年をかけて最終案が公表されました。

 

改正のポイント

そもそも民法とは、私人(市民)の間における法律関係を規定する法律で、総則・物権・債権・親族・相続の5編から構成されています。今回の民法改正では、民法全体に共通する規定である「総則」と、私人間の金や物などの取引に関する規定である「債権」が主に改正されました。改正に伴い、以下の4つのポイントが掲げられました。

  • 判例の明文化
  • 用語の平易化
  • 社会経済の変化への対応
  • 国際的取引ルールとの整合性

これにより、国民生活に密接に関わる民法が、より分かりやすい法律に変わります。

 

企業実務への影響と対処法

民法改正に伴い、企業が実務上の影響を受ける点がいくつかあります。曖昧な契約ルールの明文化や、判例を確認する過程を省くことが可能になるなどのメリットがある一方で、正確な知識がなければ不利益を被る危険性もあります。企業実務に関係する主な改正点について、その影響と一緒に解説していきます。

瑕疵担保責任に関する見直し

瑕疵担保責任とは、売買されたものに買主が知らない欠陥があった場合に売主が負う責任のことを指します。改正後は、「瑕疵」という曖昧な表現はなくなり、「契約不適合」に変更されます。また、買主は履行の追完の請求や損害賠償請求、契約の解除、代金減額請求ができることが明記されます。これにより買主の権利・救済手段が整理されるでしょう。

短期消滅時効の廃止

消滅時効とは、権利を行使しないまま一定期間が過ぎた場合、その権利が消滅する制度です。現行の民法では原則10年と規定されていますが、職業や請求の種類によっては1~5年の「短期消滅時効」が定められています。また、商事時効にも5年という規定があります。改正後は、この短期消滅時効と商事時効はともに廃止され、「権利を行使することができる時から10年」という従来の原則的時効期間に加えて、「権利を行使できると知った時から5年」という主観性を含んだ規定が設けられ、いずれか早い方の経過によって時効が完成します。消滅時効期間の統一によって、企業実務における債権管理は簡単になるでしょう。しかし、これまで短期消滅時効が適用されていた債権については時効期間が延長されることにもなります。したがって、短期消滅時効が過ぎたからといって誤って契約書等を処分しないよう注意が必要です。

定型約款に関する規定の新設

約款とは、大量の同種取引を迅速かつ効率的に行うために作成された、定型的な内容の取引条項です。例えば、ウェブサイトの利用規約などの形で身近に利用されています。現在の商習慣では詳細で画一的な約款を用いることが必要不可欠ですが、現行の民法には約款に関する規定はありません。したがって、法的な根拠がなく不安定なままです。改正民法では、定型約款を契約の内容とする旨の合意があった場合と、取引の際に契約の内容が定型約款であることを相手にあらかじめ表示していた場合は、定型約款の条項を相手方が認識していなくても合意したものとみなし、契約内容となることを明確化しました。このようなみなし合意が法で明文化されたため、今後は契約上のトラブルが減少することが期待されます。一方で、約款の全面的見直しや慣習的なルールの変更など、企業もリスクを負いかねないということを認識しておく必要があります。

保証に関する見直し

民法で定められている債務保証により、保証人は主債務者が債務の支払いをしない場合に、代わって支払いをする義務があります。改正民法では、債務者が保証人と保証契約を結ぶ際に、保証人の意思確認として、契約日からさかのぼって1ヶ月以内に書かれた公正証書が必要となります。また、個人保証人の保護の拡充の観点から、契約を結ぶ際に債務者は自らの財産や債務額、履行状況を保証人に公開する義務を課されます。

法定利率の見直し

法定利率とは、契約時に当事者間で金利を定められなかった場合に適用される、民法で定めた金利を言います。改正に伴い、現行の民事法定利率が年5%から年3%に引き下げられ、商事法定利率の年6%も廃止され同じく3%になります。また、3年ごとに法定利率の見直しがあります。利率が現状より引き下げられるため、法定利率で契約書を定めている企業は、必要に応じて忘れずに約定を結び直さなければなりません。変動金利性の導入により、思わぬ損失を招くことになりかねませんので、利率算定の基準には十分な注意が必要です。

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まとめ

来春に施行される改正民法に伴い、企業実務が影響を受ける主な内容について説明しました。民法全体に共通するものの他に、債権に関する法律が大幅に改正されています。私人間の金や物の取引に関する重要な分野であるため、企業実務を担う方々は改正民法を理解しておくことが必要です。今回取り上げたのは改正のほんの一部に過ぎないため、多様な判例を踏まえながら来年の施行までに対応していきましょう。

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