コラボヘルスを活用して健康経営を効果的に実現しましょう<前編>

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公開日:2018.4.23

近年は過重労働問題を皮切りに、生産性の低さやキャリアのあり方などが問題視されています。こうした社会の動きのなか、従業員の心身の健康維持を企業が主体的にケアしていく健康経営という考え方が注目されています。今回は、そんな健康経営の具体的施策の1つであるコラボヘルスについて前後編の2本立てで詳しく解説します。前編では、「健康経営とは」、「コラボヘルスとは」、「コラボヘルス導入から期待できる効果」の3つのポイントを紹介します。

健康経営とは

日本において健康経営が注目される背景

これまで日本では、健康といえば従業員の自己管理が基本で、企業は従業員の個人的な健康問題には関与しないという考え方が主流でした。しかし近年では、健康問題は従業員個人で解決するのには限界があるため、従業員の健康は企業も含めた社会全体で支えることで実現させていかないといけないという考え方が広まっています。この背景には次の3つの社会的な事情が指摘できます。

  • 人手不足を理由に、1人の従業員が長期にわたって健康的に働ける環境の整備によって離職率の低下をくい止めることが目指されるようになった
  • 超少子高齢社会では従業員の平均年齢も上昇しており、生活習慣病などの疾病リスクも高まっているため、企業が従業員の健康リスクに意識的になった
  • がんやメンタルヘルスの問題など、長期の治療を要する場合には治療と仕事を両立できる環境を作ることが企業の責任として考えられるようになった

こうしたなかで、健康経営という考え方に注目が集まっています。健康経営とは、企業が雇用している従業員を人的資産と捉え、彼らの健康増進を投資として積極的に推し進める経営方法です。この健康経営の考え方が欧米の経済界で広まりつつあることを受け、日本でも平成27年より経済産業省が普及を呼びかけています。ちなみに健康経営という言葉自体は、日本ではNPO法人の法人健康経営研究会の登録商標となっています。

健康経営の目的

従業員の健康が損なわれることで生じるコストには、健康保険組合からの医療費の支出が第一に考えられます。しかし実際は、それ以外にも生産性の低下などの多くの影響が企業に及んでいます。また、一口に健康と言ってもその対象となるものは幅広く、近年取りざたされることの多いメンタルヘルス以外についても考慮する必要があります。例えば、アレルギーや偏頭痛でさえも業務に深刻な影響があり、生産性低下に繋がると言われています。

健康経営では、医療費削減によってコストの削減を図るという発想から脱して、従業員を企業の重要な資産と考えます。企業は従業員の健康管理を経営課題の1つとして考え、それを踏まえて戦略を立てます。その戦略の実践を図ることで、従業員の健康の維持・増進を通して企業全体の生産性向上の実現が目指されます。

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コラボヘルスとは

コラボヘルスとは、従業員とその家族の健康の維持を、健康保険組合や企業の協力のもと効率的に行うことです。コラボヘルスの実践には、健康保険組合、企業、従業員の3者ともの協力が必要です。

平成27年より厚生労働省は、保険事業者を対象に、健康医療情報の電子データの分析を利用した「データヘルス」を推進してきました。このキャンペーンは、上述した経済産業省主導の「健康経営」との連携のもとでの相乗効果が目指されており、平成29年に閣議決定された「未来投資戦略2017」は、「保険者のデータヘルスを強化し、企業の健康経営との連携(コラボヘルス)を推進する」としています。

そして、このコラボの鍵となるのがデータの活用です。より具体的には、健康保険組合と企業が持っているデータを、疾病予防や健康増進のために活用することになります。ここで用いられるデータには様々なものがありえますが、例えば個人の健康診断の結果やレセプトデータ、企業が独自に行う「健康度調査」などが挙げられます。有給休暇の取得状況や欠勤日数など、企業側が持っている人事労務データの活用も考えられるでしょう。

 

コラボヘルス導入から期待できる効果

コラボヘルスが大きく取り上げられる背景

コラボヘルスが大きく取り上げられる背景の1つが、平成18年の医療制度の構造改革によって「特定健康診査・特定保健指導制度」が導入されたことです。この制度は、現役で働いている世代に対する生活習慣病対策として取り入れられ、現役の勤労者の健康状態を改善することが、将来的に彼らが高齢者となった時の医療費を抑制するという考え方に基づいています。

原則 40 歳から74 歳までの公的医療保険に加入者している全員が特定健診を受けなければなりません。また、特定健診の結果に応じて、特定保健指導を実施することが保険者に対して義務付けられています。もともと労働安全衛生法上の健診が企業により行われてきましたが、それに加えて現役で働いている世代に対する健診に保険者と母体企業の両者が関与するようになったわけです。これにより健康保険組合、企業、従業員が協力する必要性が認識され始め、現在のコラボヘルスへの注目の高まりにつながっていると言えるでしょう。

コラボヘルス導入に期待されるメリット

先述のように、コラボヘルスには健康保険組合、企業、従業員の協力が必要です。協力によって、3者ともにメリットをもたらすことができます。

まず、健康増進によって健康保険組合は療養費の支払いによる支出を減らすことができ、財務基盤を安定させられます。企業とともに動くことで組合員に直接健康増進のための指導をすることができるので、この点については大きな効果が期待できます。これは特に赤字に苦しむ健康保険組合には大きなメリットと言えるでしょう。

企業にとっては、従業員が健康でいることで個々のパフォーマンスを上げることができ、会社全体の生産性を向上させることができます。また従業員は、会社や組合からの指導によって、効率的に自らの健康を保つことが可能です。

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まとめ

前編では「健康経営とは」、「コラボヘルスとは」、「コラボヘルス導入から期待できる効果」の3つのポイントを紹介しました。従業員の健康を維持・増進し、生産性向上を図る企業の健康経営という取り組みが注目されるなか、企業、健康保険組合、従業員の3者の協力によってより有効な医療制度が実現されることが期待されています。後編では「コラボヘルス導入の具体的方法」、「コラボヘルス導入に当たり注意すべき点」の2点を中心に紹介します。

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