ラインケアとは?ラインケアの運用手順とともに解説

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公開日:2024.4.18

ラインケアとは、部長や課長など職責のある管理監督者が、部下のメンタルヘルスケアを行うことを指します。上手く運用していく為には、管理監督者が部下の普段と違う様子を察知できるような相談体制を整える必要があります。部下の普段と違う様子を察知したら、本人への声掛けを行い相手の考えや感情を受け入れます。その後、部下からの意見をもとに改善策を講じる必要があります。管理監督者自身での改善が難しい場合は、産業医や保健師と連携し、解決を図りましょう。

    

ラインケアとは

厚生労働省が推奨する4つのメンタルヘルスケアのひとつ

ラインケアとは、厚生労働省が推奨する「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」これら4つのメンタルヘルスケアのひとつです。 ラインケアは、管理監督者が心の健康に関する職場環境の改善や部下からの相談対応を行うことを言います。厚生労働省の調査によると、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業または退職した労働者がいた事業所の割合は10.1%でした(令和3年)。近年、経済・産業構造の変化に伴い、仕事に関する強い不安やストレスを感じている労働者が増加していることから、ラインケアを始めとする職場におけるメンタルヘルスケアの必要性が高まっているのです。

ラインケアにおける管理監督者とは

そもそも管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者のことです。「管理監督者」に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断されます。管理監督者の定義は以下のとおりです。

  • 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容や責任、権限を有していること
  • 現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること
  • 賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること がなされていること

なお、「課長」「リーダー」といった肩書があっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項について上司に決裁を仰ぐ必要がある者は管理監督者とは言えません。

適切なラインケアのために研修の実施を

適切にラインケアを運用するためには、管理監督者への研修の実施が不可欠です。厚生労働省が運営している「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳」では、事業者向けに職場のメンタルヘルス研修ツールを用意しています。 ラインケア研修のほか、セルフケア研修やハラスメント研修をeラーニングや資料で学べるため、積極的に活用しましょう。

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ラインケアで管理監督者がやるべきこと

「いつもと違う」部下の把握と対応

ラインケアでは、管理監督者が「いつもと違う」部下に速やかに気が付くことが大切です。例えば、部下に以下の様子・行動が挙げられます。

  • 遅刻、早退、欠勤が増える
  • 無断欠勤がある
  • 仕事の能率が著しく悪くなる

このような場合、病気が隠れている可能性もあるのです。管理監督者が対象の部下の話を聞き、産業医に相談するよう促す、あるいは管理監督者が産業医に相談する仕組みを作っておくことが望ましいでしょう。

部下からの相談対応

部下が自発的に相談できるよう、日頃から部下が上司に相談しやすい環境や雰囲気を整えておかなければなりません。 状況に応じて、管理監督者から部下に声をかけ、以下の対応を行います。

  • 傾聴する
  • 適切な情報を提供する
  • 必要に応じて事業場内産業保健スタッフや外部機関への相談や受診を促す

管理監督者が適切に対応できるように、事業者が管理監督者に傾聴スキルを学ぶ機会を与えることが重要です。

職場復帰における支援

数か月にわたって休業していた人に、休業前と同じ量の仕事を期待することは困難です。管理監督者は、復職者が抱えている不安な気持ちを理解していることを示し、部下に安心感を与える必要があります。そうすることで、復職者の職場での緊張が軽減されるとともに、同じ職場で働く他の部下たちの緊張を和らげることにもなるのです。

     

ラインケアの運用手順

①職場環境等の評価

まずは、職場ごとのストレス要因の現状を把握しましょう。管理監督者による日常的な観察や、産業保健スタッフによる見回り、従業員からのヒアリングなどを行います。「仕事のストレス判定図」を活用すると、職場単位でのストレスの数値化が可能です。

②職場環境等のための組織づくり

職場環境を改善するためには職場の責任者である上司の理解と協力が不可欠です。職場環境等の評価結果を上司に説明し、職場環境等の改善への協力を依頼しましょう。必要に応じて上司向けに教育研修を実施します。こうした関係者で職場環境等の改善の企画・推進を行うタスクフォースを作りましょう。人事・労務担当者も参加するとより効果的です。

③改善計画の立案

「仕事のストレス判定図」や職場の見回りの結果をもとに、職場の管理監督者や従業員の意見を聞き、ストレス要因となっている可能性のある問題を具体的にリストアップしましょう。職場環境、仕事内容、人間関係などに分類することも有効です。リストアップした問題に対して、関係者で議論したり、従業員でグループディスカッションをしたりして、改善計画を立てます。「職場環境改善のためのヒント集」やメンタルヘルス改善意識調査票、快適職場調査などのツールを活用すると改善計画を立案しやすくなるでしょう。

④対策の実施

改善計画に従い対策を実施しましょう。計画どおり実施されていることを定期的に進捗確認する必要があります。対策が途中で立ち消えにならないように継続的に観察することが重要です。対策の実施状況や効果について、事前に報告の場を設けておくと進捗管理が容易になります。

⑤改善の効果評価

改善後は、その効果を評価しましょう。効果評価は、プロセスの評価とアウトカムの評価の2種類あります。プロセスの評価では、対策が計画どおりに実施されたかどうか、そうでない場合は何が障害となったか、数値または事例などの質的な情報から評価します。アウトカムの評価は、目的となる指標が改善したかどうかを、ストレス調査や健康診断の結果を比較するなどして評価するというものです。職場環境改善の効果が現れるまでには数年以上かかるため、結果を急がず対策を継続することが重要です。

      

まとめ

今回は、ラインケアの概要や管理監督者がやるべきこと、運用手順について解説しました。近年、メンタルヘルス不調により休業や退職をする労働者が増加傾向にあるため、企業は職場全体でメンタルヘルス対策を講じることが求められています。適切な対応をとれるように、管理監督者への研修の実施が必要です。管理監督者の負担が大きくならないように、事業場内産業保健スタッフと連携してラインケアを運用するようにしましょう。

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