IFRS(国際財務報告基準)導入のメリット・デメリットを解説!

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公開日:2018.7.23

IFRSすなわち国際財務報告基準とは、国際的に標準化された会計基準を指します。世界的に普及しているものの、日本では導入が遅れており、一般的な認知度は未だ低いままです。IFRSの導入は、グローバル企業にとっては経営管理や業績の比較の面でメリットがある一方、業務負担やコストが増加するというデメリットも存在します。今回は、今後急速に導入が進むであろうIFRSについて、その概要と特徴、メリット・デメリットを解説します。

IFRSとは

国際会計基準(IFRS)は、国ごとにバラバラな会計基準を統合し、世界基準の会計制度を作る試みです。ロンドンを拠点とする国際会計基準審議会(IASB)が中心となって推進されています。IASB自体は民間団体ですが、各国政府から多額の寄付を受けており、また各国の基準設定機関との共同作業を行っているなど、準公的な性格を帯びています。

IFRSは地域によっては正式な会計基準として用いられており、まず2005年にはEU域内の上場企業にその適用が義務化されました。その後も採用する国と地域が拡大し、現在は120カ国以上で採用されています。

大きな経済規模を持つ主要国の中で、未だ IFRSを導入していないのは米国と日本だけです。日本においては、2010年3月期から一定の要件を満たす企業は、任意でIFRSを適用することができるようになりました。さらに、2013年10月には任意適用の要件が大きく緩和され、この規制緩和により、新規株式上場企業や、資本金20億円以上の海外子会社を持たない企業でもIFRS を任意適用することができるようになりました。

なお、任意適用の段階では他の会計基準とIFRSが並存していることを認めていましたが、IFRSが強制適用されると企業は原則としてIFRSを用いなければならなくなります。日本は2015年に上場企業全てがIFRSを用いることが義務化されるように制度が変更される予定でしたが、震災の影響や、米国のIFRS移行が遅れていることを受けて、結局2015年に強制適用されることはありませんでした。その結果、日本で採用できる会計基準は現在4つあり、日本基準、米国会計基準、IFRS、修正国際基準(JMIS)が併存しています。ただし、JMISを採用する企業はわずかであり、米国会計基準を用いる企業も今後減っていくものと予測されています。

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IFRSの特徴

従来の日本の会計基準と比較すると、IFRSには以下の3つの特徴があります。

原則主義

日本基準や米国基準は細則主義を取っていますが、IFRSは原則主義を取っています。すなわち、日本基準や米国基準においては会計基準や解釈指針、実務指針などについて非常に細かくルールが定められているのに対し、原則主義のIFRSでは大まかにルールが設定されているだけで、細かな部分は各社や各国の事情に応じて解釈していくことになります。これは、IFRSが従来統合されていなかった各国の会計を統合する国際標準の会計基準であるという性格を反映したもので、それぞれの国で使いやすいよう柔軟に解釈する余地を残したものだと言われています。ただ、それは各社で勝手に解釈していいというものではなく、独自の解釈をした際にはその根拠を明確に示さなければならず、結果として大量の注記がなされる傾向があります。

貸借対照表重視

日本基準が損益計算書重視であるのに対し、IFRSは貸借対照表重視(BSアプローチ)だと言われています。つまり、日本基準においては一定期間の損益の明示が重視されますが、IFRSは将来キャッシュフローの現在価値を示すことを重視しており、投資家などに対してどのような情報を正確に公開すべきかについての基本的な考え方が異なります。

グローバル基準

IFRSは国際的な使用に耐える必要性から、各国の独自性やそれぞれの事情を組み込んでいません。言語の差異にも影響されないよう、基本的に定義も英語でなされています。

 

IFRSのメリット

海外企業や投資家への説明の簡易化

海外の投資家は日本の会計基準よりも国際基準のIFRSの方が読み慣れているものと考えられますので、企業の現状を誤解なく伝えられる可能性が高まります。結果として、資金調達の選択肢を増やすこともできるようになるでしょう。

海外子会社との連携強化

海外に子会社を多く持つグローバル企業の場合は、日本の親会社と海外子会社の間で会計指標を統一させることができます。各国の制度の差異による影響を最小化した形で経営管理が行えるようになり、子会社との会計コミュニュケーション上の齟齬を防げるというメリットがあります。

合併・買収時の利点

さらに、合併や買収に積極的な企業に特有のメリットもあります。日本基準とIFRSでは、企業の買収価格と帳簿上の価格の差である「のれん代」についての扱いが異なります。日本基準では毎年一定額を償却して費用計上しなければならないので、決算での利益の目減りが避けられません。他方のIFRSでは企業価値が大きく減らない限り、この「のれん代」が償却されず、費用として計上されません。そのため、買収や合併を繰り返している企業の場合は、決算で利益をより多く示すことができるようになります。

 

IFRSのデメリット

IFRSの最大のデメリットは、会計制度の難解さです。さらに、会計基準に英語で触れる必要性が生じ、規定自体も頻繁に改訂されるので、事務処理コストが大きく増大します。また、原則主義であるIFRSへの移行は、説明責任を果たすために大量の注記を記すことが要求され、これまで日本基準を利用していた時にはなかった作業も行わなければなりません。

 

まとめ

IFRSは国際的に普及しているものの、日本では未だ認知度が低いと言わざるをえません。しかし今後は、IFRSを導入する企業がますます増えていくと予想されます。現在4つの会計基準が併存している日本の会計基準は、いずれIFRSに集約されていくことでしょう。現時点でその動向にはまだ見えにくいところがあるため、各社の動きについての日々のニュースから、しばらくは目が離せません。

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