「内定」も労働契約です!内定取り消しは制限されます

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公開日:2017.6.27

新卒学生の就職活動における選考が6月に解禁され、多くの企業では「内定」を出すことになります。採用内定により労働契約が成立したと認められる場合、労働契約法や労働基準法等の様々な規定が適用されることとなり、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない内定取り消しは無効とされます。

今回は、内定の法的性質や内定取り消しが認められる事由、やむを得ず内定取り消しを行う場合の注意点等について解説します。

 

内定とは

内定とは、新たに労働者を採用する際に、勤務が始まる前から入社の約束をすることを指します。一般的には、企業が求職者に対して内定通知を行い、求職者が誓約書を提出するなどにより内定を承諾した場合に、内定が成立します。

内定には、それぞれの状況によって様々な形態があり、法律によって明確な規定があるわけではありません。しかし、内定の取り消しに関する過去の判例などから、一般的には内定は「始期付解約権留保付労働契約」とみなされています。

「始期付」とは、大学卒業後など労働契約が始まる期日が決まっていることを意味します。「解約権留保付」とは、企業が労働契約の解約権を留保している状態であり、一定の範囲でその解約権を行使し、労働契約を解約することができるということを意味します。

すなわち内定は、労働契約の開始時期が定められており、かつ、それまでの期間に企業が一定の範囲で契約を解約する権利を留保した労働契約だといえます。

 

内定取り消しの制限

内定の成立により労働契約が成立したと認められる場合、労働契約法や労働基準法などの様々な規定が適用されることとなります。すなわち、企業による内定取り消しは解雇に当たり、労働契約法第16条の解雇権の濫用についての規定が適用されることから、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない内定取り消しは無効となります。

 

・関連記事:もしものために、知っておきたい…従業員を解雇するときに必要な手続きとは?

 

内定取り消しが認められる事由

内定取り消しが有効とされるのは、原則として、下記の場合に限られるとされています。

  • 採用内定の取消事由が、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実である場合
  • この事実を理由として採用内定を取り消すことが、解約権留保の趣旨、目的に照らして、解雇として客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる場合

上記の①に該当する事由としては、具体的に、以下のような場合が考えられます。

 

  • 予定どおり卒業できなかったなど、契約の前提となる条件や資格の要件を満たさなかった場合
  • 内定者の健康状態が悪化し、働くことが困難になった場合
  • 履歴書等の提出書類に重要な経歴詐称等が発覚した場合

 

企業の経営悪化による内定取り消し

企業の経営悪化を理由として内定を取り消す場合は、整理解雇の場合に準じて判断されることになります。すなわち、以下の4つの要件をすべて満たしていることが必要であり、これらを踏まえて内定取り消しの有効性が判断されます。

 

  • 人員整理の必要性があること
  • 解雇回避のために最大限の努力を行ったこと
  • 解雇対象者の選定等が合理的に行われていること
  • 手続きが妥当であること

 

内定取り消しを行う場合の注意点

やむを得ない事情により内定取り消しを行う場合は、以下の点に注意することが必要です。

 

適正な手続きで行うこと

内定により労働契約が成立していると認められた場合、内定取り消しは解雇とみなされ、労働基準法による解雇予告の規定が適用される可能性があります。解雇予告は少なくとも30日前までに行うこととされているため、やむを得ない事情により内定を取り消す場合は、できるだけ早い段階で、少なくとも30日前までには通知を行うようにしましょう。

 

ハローワークへ届け出ること

やむを得ない事情により新規学校卒業者の内定を取り消す場合は、職業安定法施行規則の規定により、所定の様式によりハローワークに通知することが必要です。

 

内定取り消し対象者へのフォローを行うこと

厚生労働省の指針により、企業は内定取り消しの対象となった学生や生徒の就職先の確保について最大限の努力を行うとともに、内定取り消しを受けた学生・生徒からの補償等の要求には誠意を持って対応することとされています。

 

内定取り消しによる企業名の公表について

企業による内定の取り消しを防止するため、内定取り消しの内容が下記のいずれかに該当する場合、厚生労働大臣はその企業名等について公表できることとされています。内定を取り消したとして企業名が公表されてしまうと、今後の採用活動に大きく影響することから、特に注意することが必要です。

 

  • 2年度以上連続して行われたもの
  • 同一年度内において10名以上の者に対して行われたもの(内定取り消しの対象となった新規学校卒業者の安定した雇用を確保するための措置を講じ、これらの者の安定した雇用を速やかに確保した場合を除く)
  • 事業活動の縮小を余儀なくされているものとは明らかに認められないときに、行われたもの
  • 内定取り消しの対象となった新規学校卒業者に対して、内定取消しを行わざるを得ない理由について十分な説明を行わなかったとき
  • 内定取り消しの対象となった新規学校卒業者の就職先の確保に向けた支援を行わなかったとき

 

 

まとめ

内定は労働契約であり、その取り消しについては労働契約法や労働基準法等により制限されます。また、内定取り消しは内定者やその家族の人生に大きな影響を与えてしまうものであり、決してあってはならないことです。

やむを得ない事情で内定を取り消すことになった場合は、適切な手続きを踏むとともに、当該内定者へのフォローを欠かさないようにしなければなりません。

 

 

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