平成30年度税制改正が決定! 労働関係の改正をいち早く解説!<前編>

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公開日:2018.1.22

 

平成30年度の税制改正大綱が閣議決定され、中小企業の設備投資の促進や事業承継税制の拡充など、労働関係の税制も様々な見直しがなされています。今回はそんな平成30年度の税制改正について、総務担当者がおさえるべき労働関係の税制改正を、前後編の2本立てで詳しく解説します。前編では、「働く人のための保育の提供に取り組む企業に対する税制上の優遇措置の創設」、「障害者を多数雇用する場合の機械等の割増償却制度」、そして平成29年度の税制改正の決定事項ではありますが、平成30年から施行される「配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し」の3つにポイントを絞って紹介します。

働く人のための保育の提供に取り組む企業に対する税制上の優遇措置の創設

概要

先日厚生労働省より発表された「平成30年度税制改正の概要(厚生労働省関係)」の中では、保育環境の確保に取り組む企業に関して、以下の通り言及があります。

「個人又は法人が、平成30年4月1日から平成32年3月31日までの間に、企業主導型保育施設用資産の取得等をして、その保育事業の用に供した場合には、3年間12%(建物等及び構築物については、15%)の割増償却ができることとする。」

企業主導型保育施設とは?

働き方の多様化に対応し、子育てと仕事の両立を推進することを目的として、平成28年度より企業主導型保育事業がスタートしました。「企業主導型保育施設」はこの事業の一環として、「企業が従業員のために設置する保育施設」のことを指すと考えてよいでしょう。今回の改正で、この企業主導型保育施設の新設や増設などを行って資産を購入した際には、割増償却が適用されるようになりました。

割増償却とは? メリットは?

事業に用いる物品の中には、建物や機械などのように、長期にわたり使用されるものも多く存在しますが、これらは、購入時にかかった費用を複数年度にわたって少しずつ経費に計上する、減価償却による会計を行います。何をどれくらいの期間で償却していくかについては、税法により「法定耐用年数」が定められており、通常はこの法定耐用年数に従って償却を行います。しかし時に通常の償却の限度額に一定の割合を上積みして償却を行うことを認める特例措置が取られ、これを割増償却と呼びます。今回の改正のケースで言えば、企業主導型保育施設関連の資産を入手し、減価償却する場合には、法定耐用年数に基づいて導かれる償却率に、3年間にわたって12%分(建物等および構築物は15%)上乗せした償却率での減価償却が可能になるということです。

ここで言う構築物には、

  • 遊戯用の構築物
  • 遊戯具
  • 家具
  • 防犯設備
    等が含まれます。

割増償却を利用すれば、その期間は1年あたりに計上できる経費が増えることになりますので、結果として課税対象の所得を低く抑えることができ、短期的な資金繰りの改善が見込めます。また、該当する資産を早いうちに費用に計上していくことができるため、固定資産の陳腐化に対するリスクヘッジという効果もあります。

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障害者を多数雇用する場合の機械等の割増償却制度

概要

「平成30年度税制改正の概要(厚生労働省関係)」の中では、障害者を多数雇用している企業に関して、以下の通り言及があります。

「障害者を雇用する場合の機械等の割増償却制度について、基準雇用障害者数が20人以上であって、重度障害者割合が50%以上であることとの要件における重度障害者割合を55%以上に引き上げた上、その適用期限を2年延長する。」

こちらについては、上記の保育環境確保に取り組む企業に対する特例が新設であったのとは異なり、従来の制度の改正・延長となっています。

従来からの変更点は?

そもそもこの制度は、「障害者を多数雇用している企業の機械や装置、建物およびその付属設備などに関しては割増償却(普通償却の限度額の24%、ただし工場用の建物および設備は32%)を認める」という主旨のものでした。もともと平成30年3月31日までの適用でしたが、今回の税制改正により平成32年の3月31日まで適用期間が延長されるにあたって、「障害者を多数雇用している企業」の要件の部分に変更が加えられました。

従来の要件は、次の1.~3.のうちいずれかを満たすことでした。

  1. 従業員に占める障害者の割合が 50%以上
  2. 雇用している障害者数が20人以上であり、かつ従業員に占める障害者の割合が25%以上
  3. 法定雇用率を達成している事業主で、雇用している障害者数が20人以上であり、かつ雇用障害者に占める重度障害者の割合が50%以上

今回の改正で変更が加わったのは3.の部分です。従来は「雇用障害者に占める重度障害者の割合が50%以上」となっていましたが、この数値が50%から55%へ引き上げられました。

 

配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し

概要

配偶者控除、配偶者特別控除の見直し自体は平成29年度税制改正の内容に含まれますが、適用されるのは平成30年度分以降の所得税ですので、併せてご紹介します。この改正によって、配偶者控除が適用される条件や、控除の金額等に変更が生じています。

配偶者控除および配偶者特別控除の適用条件に世帯主年収の条件が追加

従来、配偶者控除および配偶者特別控除の適用条件に、世帯主の収入についての条件は含まれていませんでした。しかし、平成30年以降は「世帯主の年間の合計所得金額が1,000万円(給与収入のみの場合は年収1,220万円)以下」という要件が新たに加わることとなりました。

配偶者控除および配偶者特別控除が適用される配偶者の収入の範囲が拡大

従来は「配偶者の年収が103万円以下ならば配偶者控除(38万円)、それを超える場合は配偶者特別控除として、配偶者の年収が141万以上になるまで控除額は段階的に減少し、最終的にゼロ」というシステムでしたが、平成30年度以降は「配偶者の年収が150万以下ならば配偶者控除(下の表の通り、金額は世帯主の年収により変化します)、それを超える場合は配偶者特別控除として、配偶者の年収が201万6,000円以上になるまで控除額は段階的に減少し、最終的にゼロ」というシステムに変化しました。上で触れた世帯主年収の条件を無視して考えれば、控除が適用される配偶者の収入の範囲が広がったと言うことができます。

控除額はどう変わる?

配偶者控除の金額については、平成30年度以降は世帯主の所得に応じて以下のようになります。

 

世帯主の合計所得(給与年収)

900万円以下

(1,120万円以下)

950万円以下

(1,170万円以下)

1,000万円以下

(1,220万円以下)

それを
超える額
控除対象配偶者38万円26万円13万円なし
老人控除対象配偶者48万円32万円16万円なし

 

次に配偶者特別控除については、以下のようになります。

 

世帯主の合計所得(給与年収)

900万円以下
(1,120万円
以下)
950万円以下
(1,170万円
以下)
1,000万円以下
(1,220万円
以下)
それを
超える額
 

配偶者の

合計所得

(給与年収)

85万
(150万)円
以下
38万円26万円13万円なし
90万
(155万)円
以下
36万円24万円12万円なし
95万
(160万)円
以下
31万円21万円11万円なし
100万
(166万7,999)円
以下
26万円18万円

 

9万円なし
105万
(175万1,999)円
以下
21万円14万円7万円なし
110万
(183万1,999)円
以下
16万円11万円6万円なし
115万
(190万3,999)円
以下
11万円8万円4万円なし
120万
(197万1,999)円
以下
6万円4万円2万円なし
123万
(201万5,999)円
以下
3万円2万円1万円なし
それを超える額なしなしなしなし

 

まとめ

御覧の通り、平成30年度の税制改正および30年度の所得税から適用される配偶者控除の改正は、程度の差こそあれ、ほとんどの企業に影響があるのではないでしょうか。常に最新の情報に注意して、制度が変更になっても混乱がないようにしましょう。後編では、交際費課税の特例措置の延長、再編・統合等に係る税負担の軽減についてご紹介します。

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