領収書のスマホ読み取り解禁!電子帳簿保存法とは

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公開日:2017.3.6

領収書

2016年度税制改正により、電子帳簿保存法の施行規則が改正され、領収書や請求書等のスキャナ保存の要件が変更されました。これにより、受領した領収書等をスマートフォン等で読み取って保存することが可能となり、経費精算業務の簡素化が期待されています。

今回は、電子帳簿保存法の概要や2016年度税制改正と2020年度税制改正による制度改正ポイント、領収書等を電子保存するにあたっての手続きについて解説します。

 

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法とは、国税に関する帳簿や書類を電磁的記録(電子データ)等により保存するときの方法について定めた法律です。正式名称は、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といいます。

従来、国税関係書類については、法令により紙で保存することが義務づけられていました。しかし、この規制は、民間企業にとって業務効率化の阻害要因となっていたことから、電子保存を行うことができるよう制度が整備されてきました。

現在は、電子帳簿保存法により、税務署長の承認を受けた場合、領収書等の国税関係書類を一定の手続きに従ってスキャナを用いて電磁的記録として記録し、それを保存することで、紙の保存に代えることができるようになっています(これを、「スキャナ保存」といいます)。

 

2016年度税制改正による制度改正ポイント

2016年度税制改正では、国税関係書類の保存についてさらに利便性を向上させるため、電子帳簿保存法の施行規則が改正されました。この改正により、スキャナ保存制度について下記の点が変更されることとなり、領収書等をいつでも、どこでもスキャナ保存できるようになりました。

 

スキャナ装置の要件緩和

これまで、国税関係書類の読み取りを行うことのできるスキャナは、原稿台と一体となったものに限定されていました。しかし、この要件が廃止され、デジタルカメラやスマートフォンを用いて領収書等を読み取ることが可能となりました。

 

スキャンする際の手続要件の整備

領収書や請求書等について受領者が読み取る場合は、受領した領収書等に署名をしたうえで、3日以内に「タイムスタンプ」を付与することが要件とされました。タイムスタンプとは、電子的な時刻証明書のことをいい、タイムスタンプを付与することで、「その文書がいつから存在しているのか」「存在時刻から内容が改ざんされていないか」を証明することができます。

 

小規模企業者の特例の創設

常時使用する従業員が20人(商業やサービス業の場合は5人)以下の小規模企業者で、税理士等の税務代理人が定期的にスキャナ保存に係る事務処理内容の検査を行う場合は、「相互牽制」の要件が不要となりました。

相互牽制とは、領収書等を受領してから内容確認とスキャンを行い、タイムスタンプを付与するまでの過程を2人以上で行う体制のことをいいます。

これまで、スキャナ保存をするにあたっては“受領者・経理担当者・検査担当者”の最低3人が必要でしたが、小規模企業者の場合は “受領者・税理士”の2人で行えるようになり、人員の少ない企業においてもスキャナ保存の導入が可能となりました。

 

2020年度税制改正による制度改正ポイント

保存要件の緩和

従来の制度では対象となるデータの改ざんを防ぐため、改ざんされていないことの証明としてタイムスタンプが用いられていました。タイムスタンプの付与は今後も必要ですが、制度改正により発行者のタイムスタンプが付与されていれば受取手の付与は必要なくなりました。

新たな電磁的記録法の使用

改正後は新たなデータの保存方法としてクラウドシステムなどのサービスが含まれるようになりました。ただし、受け取る側が自由にデータを改変できないことが条件となっています。

 

領収書等の電子保存の手続き

領収書等の国税関係書類を電子保存する際は、下記の手続きで行います。

 

(1)税務署長への申請

国税関係書類をスキャナ保存しようとする場合は、スキャナ保存を開始する日の3ヶ月前の日までに、所轄の税務署長の承認を得ることが必要です。申請書は国税庁のホームページからダウンロードできるので、必要事項を記入のうえ、最寄りの国税局または税務署に提出します。

 

(2)国税関係書類のスキャン・タイムスタンプの付与

従業員が領収書等を受領したら、署名のうえ、デジタルカメラやスマートフォンにて領収書等をスキャン(撮影)し、社内のパソコンやクラウドなどに転送します。受領者がスキャンを行う場合は、受領してから3日以内にタイムスタンプを付与することが必要です。

 

(3)経理担当者等による内容確認

経理担当者が、スキャンされた領収書等の内容を確認します。このとき、基本的には原本の確認は必要なく、送られてきた記録事項を確認するのみで問題ありません。

なお、小規模企業者の場合で、下記で説明する事後検査を税理士等の税務代理人が行う場合は、このプロセスが不要となります。

 

(4)事後検査

領収書等のスキャンを行った従業員や、スキャンされた領収書等の内容を確認した経理担当者以外の人が、スキャナ保存に係る作業の手順やスキャンデータに問題がないかなどの事後検査を行います。

 

(5)原本破棄

上記の事後検査が終わるまでは、事業所や支店において領収書等の原本を保存しておくことが必要です。事後検査が終わったら、領収書等の原本を破棄することが可能となります。

 

 

まとめ

今回の制度改正により領収書等をいつでもどこでもスキャナ保存することが可能となり、国税関係書類に係る電子保存制度の利便性はさらに向上しました。事前申請や事後検査等の手続きは必要となりますが、経費精算業務の簡素化が期待されますので、ぜひこの機会に電子保存制度を活用してみてはいかがでしょうか。

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