イクボス管理職に聞く!育児ができる企業カルチャーの作りかた

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公開日:2016.11.25

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産休や育休は社員の権利、とはいえ現実はなかなか厳しく、特に男性の育休取得率が一桁代であることは知られているとおりです。配慮してあげたいと心情的には思っても、人事の予定が立てられず困ったり、子どものいない社員とのバランスに苦慮したり、という経験のある人も多いのでは?

今回は、NPO法人ファザーリング・ジャパンが設立した「イクボス企業連盟」に加盟している株式会社ビースタイル(以下 ビースタイル)の執行役員、中村浩史氏(以下、中村氏)に、育児しやすい企業風土の作りかた、具体的な方策を聞きました。人材派遣や紹介サービスを手がけるビースタイルでは、主婦人材の活用を事業の一つに据えており、社内には出産・育児しながら働く女性社員が多数。自身、2児を持つイクメンである中村氏の経験や失敗・成功例、ぜひ参考にしてみてください。

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株式会社ビースタイル 執行役員 経営管理本部統括 中村浩史(なかむら・ひろふみ)

一橋大学卒業後、2001年株式会社インテリジェンス入社。2003年に創業2年目の株式会社ビースタイルに入社。営業部門のマネージャーや新規事業の立ち上げ等を経て、2015年より現職。人事・総務・経営企画・財務経理・情報システム・CS向上部門など、責任者として企業運営の中核部門を統括。またグループ企業、株式会社ビースタイル・ソリエの代表取締役社長も務める。

 

なろうと思ってなった訳じゃないイクメン

 

――イクメン、イクボスになった経緯をお聞かせください。

中村氏:前の職場には共働きの人があまりいなかったので、イクメン・イクボスについて考えたことは実はありませんでした。その後結婚して、妻が「ずっと働き続けたい」と言うので、気がついたらイクメン・イクボスになっていた感じです。

今は息子が8歳で、娘が4歳ですが、乳幼児期には妻と連絡を密に取って、どちらが何時に帰れるか細かく調整して乗り切りましたね。私が保育園へ迎えに行って1時間ほど面倒を見て、帰ってきた妻とバトンタッチして、それから職場へ戻って仕事を片づけたこともあります。イクメン・イクボスに対する先入観がなかったので、逆に臨機応変に、その場その場でやるべきことをやっていった、という感じです。

 

――家事や育児の分担で苦労していることは?

中村氏:妻が全部ばっちりやりたいタイプなので、家事のやりかたの落としどころは大変でした。私の方からは、ルンバや乾燥機つき洗濯機の利用を提案して、話し合って、導入したりしなかったりですね。基本は妻のやりかたを尊重しています。妻が乾燥機より「お日さまに当てて干す方が好き」と言うので、雨でない限りは朝、洗濯機を回して干すのは私の担当です。12年間の結婚生活の中で、こういう形ができてきました。

 

【ポイント1】

妻の家事・育児方針を尊重しつつ家電の導入などを提案!

 

――お子さんにはどう接していますか?

中村氏:最初は、元気な息子に比べると娘の世話は楽だな、と思っていたのですが、最近は口が達者になってきて別の意味で大変ですね。息子がバスケを始めたので、一緒にやったりしています。妻も休みたいだろうと思うので、土曜日は子どもを連れて一日外出するようにしているのですが、私も疲れていて公園のベンチで寝てしまうこともあります。ただ、子どもに対して、「人生を諦めちゃってる」姿は見せたくない。帰宅が遅かったり疲れていたりはしても、「やりたい仕事を、楽しんでやっている」父でありたいと思っています。

 

How To Make 育児カルチャー 職場の雰囲気の作りかた

 

――妊娠や育児で社員が休みがちになった場合、その社員にはどんな言葉をかけますか?

中村氏:必ず、きっちり休んでもらいます。中には、「自分の仕事の責任を果たせていないから、残ってやります」と言う人もいるのですが、そういうときに無理をすると、かえって長く休むことになるんですよね。だから、「自分の責任を果たせなかったことについては、家で反省してね」と言って早退してもらいます。あと、「フォローしてくれる周りの人には、感謝の気持ちを必ず伝えてくださいね」ということも必ず伝えますね。

 

――しわ寄せを受ける社員が、内心不満をためてしまうこともありそうですが、どのようにケアされていますか?

みんなには、「今はこの人だけれども、もしかしたらあなたの親が要介護になるかもしれない、あなた自身が出産・ケガをして休んだりすることもあるかもしれない。お互いさまだから認めてあげようよ」と言います。そういう人が出るたびに必ず伝えています。なあなあにしてしまうと、「あの人ばっかいい目にあって」という不満を持つ人が出てくるので。「誰々さんが時間内に仕事を終えられなかったこと、チームの何々さんがそのフォローに入ってくれたこと、人事としてちゃんと見ているから」ということも言いますね。そのように公平に評価をし、その上で「お互いさま」と伝えれば、嫌な顔する人はいないんじゃないでしょうか。

 

【ポイント2】

評価は公平に、「お互いさま」であることは意識して何度も伝える!

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――そのほかに、職場の雰囲気をよくするために心がけていることは?

中村氏:わが社が大事にしている価値観に、「四方善」があります。よく言われる企業倫理は「三方善」、つまり「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」、売り手も買い手も満足して社会貢献もできるのが良い、という考えですね。わが社はそれに「仲間良し」を加えた「四方善」を企業理念として掲げています。だから「同僚にも幸せになってもらわないといけないよね」と、この価値観を浸透させるための施策はたくさんやっています。役員が社員と月1回ランチして「四方善」について語り合ったりとか、全社集会では必ず言ったりとかです。この価値観が浸透していけば、わざわざ女性のためにとかではなくて、自然と「お互いさま」になると思います。

 

【ポイント3】

会社の考えをシェアする機会を増やす!

 

――休む社員の補充を入れる場合はどのようなケアをしていますか?

中村氏:ある社員が「○日には出てきます」と言っていたのに出てこられない、そういうことが2、3度あったら、(自分でも見込みを立てられない状態なのだな)と判断して補充を考えます。それは管理職の責任ですし、当人にもはっきりとそう伝えます。でもそれで不安がる社員はいませんね。「仕事がなくなる」みたいな不安感があれば抵抗するんでしょうが、人を補充したとしても産休明け育休明けにはちゃんとポジションがある、そういう安心感があれば大丈夫です。会社が成長し続けているならば、選択肢をさらに提供しやすくなりますね。

 

【ポイント4】

会社の体力を上げるためにも、マネージャーとして結果を出すべし

 

明日からできる!イクボス流マネジメント術

 

――具体的には、どのような制度を設けると産休・育休がとりやすくなりますか?

中村氏:わが社が某大手自動車メーカーさまに提案して成功している事例なのですが、0.5人分、というヘッドカウントを導入することです。ヘッドカウントを1に固定してしまえば、勤務時間が少ない分アウトプットが下がる可能性がある産休・育休の人よりフルタイムの人をとりたい、となりがちです。だから組織として、「0.5人分のリソースの手当をしてあげる」システムを作れば、その現場の責任者も納得感を持って産休・育休の社員を受け入れやすくなります。柔軟な要員管理が、働きやすい職場のカギだと思いますね。

 

【ポイント5】

要員管理を柔軟に

 

――休みがちな人の仕事を他の社員がフォローするために必要なしくみは?

中村氏:どの社員が何の仕事をしているか、常に見えるように運営していくことが大事だと思います。わが社ではどの部門でも週1で会議をやり、明日何をどこまでやるかをSNSで共有しています。ですから誰が今何をやっているのか可視化されていて、その人が急に休んでも他がフォローに入れる。仕事の分担とサポートがしやすい環境をつくる、それが重要だと思いますね。

 

【ポイント6】

仕事は可視化してフォローしやすい体制に

 

――産休は女性社員特有の休みですが、男性管理職としてどんな配慮を?

中村氏:「ちゃんと休んで」「仕事のことは心配しないで」とは伝えますが、プライベートに踏み込み過ぎるのもよくない。なので、相談できる女性社員を用意しておくようにしています。わが社での勤務が長くて、出産・育児を経験していて、優しい話しやすい人を人事部のマネージャーにする等ですね。また、女性社員専用のSNSも設けています。完全に男子禁制なのでどんな会話がされているのか私も知りませんが、情報交換に役立っているようです。

 

【ポイント7】

プライベートには踏み込まない――相談できる人・システムを用意する

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イクボス、イクメンは世間を変える!

 

――イクメン・イクボスをやってよかったと思うことは?

中村氏:共働きなので、単純に「稼ぎが2倍でよかったなあ」と(笑)。それに妻と、「今後、仕事で何をしたい」「こういう仕事をやりたい」という話をよくします。共働きだと、極端な話、「政治家になる!今の仕事を辞めて選挙に出るぞ!」なんてことをして、落選しちゃっても大丈夫な訳ですよ。保険でもあり、働きかたの自由度もあがると思います。

 

――イクメン・イクボスは会社にとって、社会にとって、どんな影響を与えますか?

中村氏:世のお母さんたちの心が穏やかになる、そうしたら平和な世の中になる(笑)。というだけではなく、ビジネスマンも生活者・サービス利用者の気持ちを体験する時間がもっとあったほうがいいし、世の中一般の感覚に対する感度を高めたほうがいいと思うんです。ワーク・ライフ・バランスのワークとライフを完全に分けるより、生産者でもあり消費者でもあるという方が、世間の新たなニーズに気づくことができます。だから子育てが奨励される文化が会社に築かれていくことは、家庭にも社会にもよい影響をもたらすと思っています。

――ありがとうございました!

 

編集後記

「女性が多い会社で、産休や育児で大変になるということは当たり前なので、それに対してなんだよなんて言う空気はない」という言葉が印象的に残っています。育児のために仕事をセーブしたり、それぞれが大変なときにはフォローし合ったりが「当たり前」という雰囲気をつくることが、産休・育休のケアには必須なのかもしれない、と考えさせられました。 

 

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企業情報

会社名 :株式会社 ビースタイル

設立   :2002年7月5日

事業内容:女性・主婦層の雇用創出を推進する人材サービス事業

所在地  :東京都新宿区新宿4-3-17 FORECAST新宿SOUTH 5F・7F

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