ワーカホリックとは?原因やデメリット、企業がとるべき対応について解説

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公開日:2025.8.20

ワーカホリックとは、過度に仕事に依存し、私生活や健康を犠牲にして働き続けてしまう状態を指します。原因には責任感の強さや承認欲求、組織文化の影響があり、放置すると心身の不調や生産性低下を招きます。対処には業務量の見直しやマネジメント側の意識改革、休暇取得の促進などが有効です。今回は、ワーカホリックの原因やデメリット、企業が取るべき対策などについて解説します。 

      

ワーカホリックとは

ワーカホリックの特徴

ワーカホリックとは「働くことに対する中毒、依存症」を意味する造語で、「work(仕事)」と「alcoholic(アルコール中毒)」を組み合わせたものです。1970年代アメリカの作家であるウェイン・オーツが、著書のタイトルに使用したのが発祥とされています。

ワーカホリックの典型的な特徴としては、「仕事の事を考えていないと不安」という一種の強迫観念があり、それが余暇や休憩中まで及ぶ点が挙げられます。「仕事のことで頭が一杯」という状態が、本来であれば気持ちを切り替えてよい時間にまで続く場合は、ワーカホリックを疑うべきかもしれません。

ワーカホリックの原因

主なワーカホリックの原因としては、労働環境・本人の性格・余暇の過ごし方の3点が考えられます。

  • 労働環境
    普段から時間外労働が多く、仕事を家に持ち帰らざるを得ないようなケースが常態化している場合、私生活と労働の境目があいまいになりがちです。外回りやフレックスタイム制などで休憩時間が任意のタイミングとなる場合も、明確な線引きができずにワーカホリックに陥る可能性があります。
    また、職場に下記のような「ワーカホリック的な性格の人間が多い」という場合も、一種の環境要因といえるかもしれません。
  • 本人の性格
    真面目で完璧主義に近いほどワーカホリックになりやすい傾向がみられるようです。自身の成果に常に満足できず、仕事に区切りをつけるのが難しい場合や、職責やもともと持っている責任感から、完璧を求め続ける場合などが該当します。
  • 余暇の過ごし方
    打ち込める趣味や家族との時間といったプライベートを特段持たない方は、充足感を仕事に求めてしまい、結果ワーカホリックになるケースが散見されます。
    ただし、逆にワーカホリックの影響によって、本来の趣味をやめてしまったり、築いていた人間関係が希薄になったりすることも考えられるため、因果関係については議論の余地があるでしょう。

ワークエンゲージメントとの状態の違い

「ワークエンゲージメント」とは「仕事に熱中しており、長時間労働の傾向がみられる」状態を表す言葉です。

一見するとワーカホリックと同様の状態に見えますが、ワークエンゲージメントはあくまで「意欲的に仕事と向き合い、結果として労働時間が延びてしまう」という、「仕事から活力を得ている状態」を指します。

対して、ワーカホリックには「仕事をしたくなくてもしてしまう病的な状態」、いわば「仕事に活力を吸い取られている状態」も含まれるのが相違点です。

いずれにせよ、これらは主観的な感情による分類であり、実際のアルコール依存症患者のように、本人ですらどちらなのか自覚していないケースもあるでしょう。第三者が判別するのは難しいかもしれませんが、後述する悪影響もあることから、ワーカホリックの場合には適切な対処が求められます。

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ワーカホリックが及ぼす影響

燃え尽き症候群(バーンアウト)

バーンアウト(burnout)とは、ある1つの物事に打ち込んでいた人間が、突然心身に過度の疲労・変調を生じ、社会生活を送ることが困難になる状態を指す言葉です。さながら「燃え尽きた」ように見えることから、日本語では「燃え尽き症候群」とも表現されます。

この症状は一般に、継続的な高ストレス下に置かれた場合に起きやすいとされており、ワーカホリックによる常に心休まらない状態は、発症原因のひとつとなる可能性があるでしょう。

健康被害の可能性

ワーカホリックにより十分な休息・睡眠時間が確保できない状況が続けば、上述のバーンアウトのみならず、日常的な体調不良や自律神経の乱れ、免疫力の低下などを引き起こす原因となりえます。業務パフォーマンスの低下はもとより、遅れを取り戻すためにさらなる悪循環に陥るケースもあるでしょう。

職場環境の悪化

自分の仕事以外のことを考える余裕がなくなるため、同僚のみならず、友人や家族とのコミュニケーションにも時間を割くことができず、人間関係が悪化していく可能性があります。こういったストレスに起因する苛立ちや焦りといった感情が職場で露呈するようになれば、孤立した本人のみならず、部署単位でのパフォーマンス低下につながるおそれも出てくるため要注意です。

       

ワーカホリック傾向のある社員に対する企業側の対策

業務量の調整

本人のキャパシティを超えた業務の割り当てが原因となっている場合はもちろん、適切な業務量であっても一時的に、業務量の調整を行いましょう。もしも本人が工数管理を適切に行えずにワーカホリックに陥っているような場合は、代わって上長が管理・指導することで改善される可能性もあります。

ストレスチェックの実施などセルフケアの指導

事業所の規模によって年1回の実施が義務付けられているストレスチェックのほか、より高頻度で実施するパルスサーベイなどの結果に応じて、メンタルヘルスケアの指導を行いましょう。

また、雇用者側からの強制こそできませんが、悪影響が重度と思われる場合は、産業医との面談を経て通院を促した方がよいケースも考えられます。

労務管理・タイムマネジメントを整備

就業規則の整備・遵守体制が浸透していれば、過度の時間外労働や、自宅への業務持ち帰りによるワーカホリックの発生率低減が見込めます。ノー残業デーの導入や、残業へのペナルティを設ける、休日出勤には代休の取得を義務付けるなどの対策を検討し、ワーカホリックにつながりやすいインセンティブを発生させないようにしましょう。

また、労働時間と工数、およびその成果が通常想定される範囲に見合っているか否かは、直轄している管理職がいち早く気付けるワーカホリックのサインでもあります。ワークエンゲージメントの項で「判別が難しい」と述べましたが、性格やプライベートの過ごし方にワーカホリック的な傾向のみられる従業員に対しては、マネジメント上、特に注意して見守る必要があることを管理職へ周知すべきかもしれません。

まとめ

ワーカホリックの発症には環境要因と属人的な要因の両方が関連し、単に「やる気がある」ワークエンゲージメントとは根本的な心因が異なる、病的な状態です。放置すればバーンアウトによる休職・退職や、職場単位での生産性低下につながる可能性もあるため、企業としての対処が求められます。ストレスチェック・パルスサーベイの結果に基づくマネジメントや、適切な労務管理で発生を予防しましょう。

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