配属ガチャとは、新入社員の配属先が本人の希望や適性と合致せず、運任せのように感じられる状況を指します。配属ガチャにおける「アタリ」は希望部署への配属や良好な人間関係が築ける環境を指し、「ハズレ」は希望外の部署や不適切な業務内容、職場環境が合わない場合を指します。このようなミスマッチは、モチベーションの低下や早期離職の原因となり、企業にとっても人材損失などのリスクを伴います。今回は、配属ガチャの概要や問題点、企業が取るべき対策について解説します。
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若年層を中心に使われるケースの多い「配属ガチャ」という言葉をご存じでしょうか。「配属ガチャ」とは、人材を部署や部門に割り当てる「配属」に、カプセルトイのようなアイテムをランダムで入手できる「ガチャ」を組み合わせた造語です。新入社員などの間では、配属先が本人の希望や適性と合致せず、ガチャのように運任せのように感じられる状況を指します。例えば、希望する部署に配属されて良好な人間関係を構築できた場合は「アタリ」、不本意な業務内容や職場環境が合わない場合は「ハズレ」というのが一般的な使い方です。
配属ガチャが起こる要因としては、日本式の新卒一括採用や、就職に対する意識の変化などが挙げられます。例えば新卒一括採用は、計画的に採用活動を進められるというメリットがある一方、大量に採用される新入社員は必ずしも希望する部署・部門に配属されるわけではないというデメリットがあるのも事実です。一方の学生は業界研究や自己分析、インターンシップなどを経験することで、入社前から希望の職種や業務内容が決まっているケースも少なくありません。これらの要因から、本人の希望と実際の配属先にミスマッチが生じやすく、いわゆる「配属ガチャ」と呼ばれる現象が起こりやすくなっているようです。
前述の通り、希望する部署・部門で良好な人間関係を構築できた場合は「アタリ」、不本意な業務内容で職場環境が合わない場合は「ハズレ」と表現されるのが一般的です。例えば「ハズレ」を引いてしまった場合、希望の職種でキャリアを形成できない事から、仕事への熱意が低下し、会社に対するエンゲージメントが低下してしまう可能性があります。長期的な視点で見ればキャリア形成に必要な業務であっても、目先の希望を優先して離職を選択するケースも少なくないようです。
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前章でも述べた通り、配属ガチャの「ハズレ」を引いてしまった場合、自身の希望を優先して離職を選択する新入社員も少なくないようです。例えば、厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」によると、就職後3年以内の離職率は高卒社員で「38.4%」、大卒社員で「34.9%」となっており、新卒社員のおよそ3割から4割は入社後3年以内に離職するという結果となりました。大卒社員に絞ってみてみると、1年目の離職率が「12.3%」、2年目の離職率が「12.3%」、3年目の離職率が「10.3」となっており、離職者の3分の1が1年以内に離職を選択しているようです。業界研究や自己分析によって入社前から希望のキャリアが固まっているケースもあり、配属ガチャの失敗が早期離職につながっている可能性があります。
配属ガチャに外れた社員が早期離職に至った場合、採用にかかったコストが無駄になってしまう可能性があります。深刻な人材不足が叫ばれる昨今、採用競争力を高めるために採用活動に多大なコストをかける企業も少なくありません。例えば、採用活動に必要な人件費や求人媒体への広告費、イベントやセミナーなどの開催費といったコストが必要です。コストをかけて採用した人材が離職してしまった場合、再度コストをかけて採用活動を進める必要があります。採用コストの面からみても、早期離職につながりかねない配属ガチャは大きな問題です。
新入社員が本人の得意な分野以外の部署・部門に配属された場合、以降のキャリア形成に影響を及ぼす可能性があります。働き方が多様化した現在、中長期的な目線でキャリア形成を進めなければなりません。配属ガチャにハズレて不本意な業務を任された場合、本人が希望するキャリアを形成できない恐れがあります。たとえ優秀な人材であっても能力を100%引き出せない可能性があり、企業の人材育成や人事戦略にとっても大きなリスクになりかねない問題です。
配属ガチャと揶揄される運任せのような状況を作り出さないためには、新入社員の立場を意識しニーズを十分汲み取るように努めてください。新卒採用のスケジュールはある程度決まっており、内定から入社まで1年以上あるケースも少なくありません。内定者が不安に感じないよう、配属先を告知する時期を早めるなどの対策も効果的です。新入社員が配属先にこだわる背景には、働き方の多様化や就職に対する意識の変化などがあります。すぐに告知できない場合であっても、配属までのスケジュールを明確にするなど、新入社員のニーズを汲み取った対策が必要です。
そもそも配属ガチャが起こる背景には、新入社員の希望と実際の配属先のズレがあります。このズレを防ぐには、採用ミスマッチを防ぐことが肝要です。例えば、採用活動の段階から業務内容や職場環境などに関する情報を積極的に共有したり、面接時に配属や評価に関する就業規則を丁寧に説明したりすることで、採用ミスマッチを最小限に防ぐことができます。また、配属に悩むような場合は、ジョブローテーション制度を導入するのも一つの方法です。さまざまな業務を経験することで、自身の希望とは異なる業務に興味や適性を見出せる可能性があります。
採用ミスマッチを防止するには、ジョブ型雇用を導入するのも効果的です。職務記述書(ジョブディスクリプション)で具体的な職務内容を提示した上で雇用するジョブ型雇用は、採用ミスマッチが起こりにくいといわれています。メンバーシップ型雇用とは異なり業務の内容や範囲が明確になるため、採用ガチャに失敗しにくい雇用制度です。ただし、職務記述書に書かれた業務以外は任せられない、より報酬の高い企業に転職されやすいといったデメリットもあります。
今回は配属ガチャについて解説しました。配属ガチャとは、新入社員の配属先が希望や適性に合致せず、運任せのように感じられる状況です。配属ガチャを回避するには、新入社員のニーズを汲み取り、採用ミスマッチを防ぐことが重要です。場合によっては、ジョブ型雇用を導入するのも効果的かもしれません。
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