
LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字をとった、性的少数者を表す言葉の一つです。多様性が強調される現代において、性的少数者に配慮したシステムや制度を整えているLGBTフレンドリーな企業が増えています。このような制度は従業員が安心して働けるだけでなく、企業としても周りの企業と差をアピールし、優秀な人材を確保できるチャンスとなります。今回は、LGBTを取り巻く問題、企業がLGBTに取り組む理由やメリット、LGBTフレンドリー企業の取り組みを実例とともに解説します。
目次
LGBTフレンドリー企業が増えている
まずはLGBTについて整理しよう
LGBTとはさまざまな性的マイノリティのうち、以下の4つの言葉の頭文字をとった総称です。
- レズビアン(Lesbian):同性を好きになる女性
- ゲイ(Gay):同性を好きになる男性
- バイセクシャル(Bisexual):両性を好きになる人
- トランスジェンダー(Transgender):生物学的・身体的な性、出生時の戸籍上の性と性自認が一致しない人
LGBT以外にも性的マイノリティには多様なカテゴリーがあり、LGBTQといった言葉も一般的に用いられます。LGBTQは自身の性自認や性的指向が定まっていない状態にある人を示す、クエスチョニング(Questioning)が加わった用語です。
また、性的マイノリティに該当する人の割合は人口の約8%といわれています。13人に1人いるという計算となり、職場の同僚など身近な人に当てはまる可能性も大いにあるでしょう。企業はLGBTフレンドリーな取り組みにより、すべての従業員が安心して働ける職場環境の整備を進める必要があります。
LGBTフレンドリー企業とは
LGBTフレンドリー企業とは従業員がLGBTを公言している・していないに関わらず、性的マイノリティの方が働きやすい職場環境の構築に取り組んでいる企業のことです。LGBTフレンドリー企業が行う活動や制度の整備には以下のような事例があります。
- 差別禁止規定
- 行動宣言
- LGBTに配慮された福利厚生
- 当事者コミュニティの設立
- 相談窓口の設置
- 従業員への啓発活動
- 人事制度の整備
また、現在使用している企業のルールや設備に対して、性的マイノリティの方が違和感を覚え不快に感じているケースもあるでしょう。社内の問題に向き合い、性的マイノリティの人が快適に働ける職場環境の構築に取り組んでいるのがLGBTフレンドリー企業です。
LGBTを取り巻く問題
日本では、同性婚・同性パートナーが法律で認められていないなど、先進諸国と比較して性的マイノリティの方に対する環境整備が整っていないのが現状です。他にも、病院で同性パートナーの治療内容の説明が受けられなかったり、不動産契約を断られたりといった問題も発生しています。LGBTフレンドリーな社会の実現において、日本にはまだ多くの問題が残されています。
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企業がLGBTに取り組むメリット
企業のイメージがアップする
LGBTフレンドリーな取り組みを行うことで、ダイバーシティに積極的な企業であるというイメージを広めることができます。また、従業員一人ひとりを大切にする企業としての姿勢は、周囲から多くの共感を得ることができるでしょう。社会に向けて企業のイメージが向上すれば、新規顧客や取引先の増加にもつながります。
優秀な人材を確保できる
LGBTフレンドリー企業として認知されることで、LGBT当事者の方も含め、優秀な人材が集まりやすくなります。少子高齢化の影響で人手不足に悩んでいる企業にとっては大きなメリットとなるでしょう。また、LGBTに関する施策を行うことで従業員にとっても働きやすい環境となるため、人材の離職防止対策としても有効です。
生産性が向上する
企業がLGBTに関する取り組みを推進することで、生産性の向上も期待できるでしょう。LGBTへの偏見や差別がなくなり、性的指向や性自認に関連する困りごとが解消されることで、安心して働ける環境が創出されます。そして、従業員の誰もが理解され尊重されていると感じることで仕事へのモチベーションが高まり、結果的に生産性の向上にもつながります。
LGBTフレンドリー企業の取り組み実例
アクセンチュア株式会社
アクセンチュア株式会社は、インクルージョン&ダイバーシティを経営戦略の一つとして掲げ、真の平等の実現を目指す企業です。具体的な取り組みも充実しており、LGBTへの理解促進を目的としたアンコンシャスバイアス研修、「職場におけるLGBT」というeラーニング研修が実施されています。また、メンタリング制度を導入しており、メンターとなるLGBTの先輩従業員に悩み事や不安などの相談が可能です。さらに、年1回の「LGBT Pride Month」ではグローバルなイベントを開催し、著名な外部ゲストを招いたパネルディスカッションや講演などを全世界に配信しています。
日本航空株式会社
日本航空株式会社は、LGBTフレンドリーな活動が盛んな企業です。従業員の同性パートナーを社内的に認めており同性パートナー登録を行うことで、法律上の結婚をしている従業員と同様の待遇で社内制度が適用されます。また、LGBTQ関連のイベントへの参加も積極的で、2019年度にはピンクドット沖縄の開催に合わせ、国内で初めてのJAL LGBT ALLYチャーターが運航されました。また、2020年10月からは機内や空港などで使用されていた「Ladies and gentlemen」のアナウンスを、ジェンダーニュートラルな表現に変更しています。
大阪ガス株式会社
大阪ガス株式会社では、LGBTフレンドリーなさまざまな取り組みが行われています。例えば、ダイバーシティについて紹介するパンフレットに掲載されている「アライ」の意思表明もそのひとつです。ちなみに、アライとは性的マイノリティ関して積極的に理解・支援する人のことをいいます。また、従業員の相談窓口設置をはじめ、採用面接マニュアルにLGBTへの配慮に関する項目を記載、人事労務担当者へのLGBT&アライマニュアル配布など、すべての従業員が働きやすい環境が構築されています。そして近年では、LGBTフレンドリーな取り組みが評価され、PRIDE指標において最高評価のゴールドを受賞しました。
まとめ
多様性を重視する社会の風潮により、LGBTフレンドリーを明言する企業が増えています。しかし、まだ日本ではマイノリティの権利が保たれたLGBTフレンドリーな社会が実現したとはいえないのが現状です。LGBTなどの性的マイノリティの方の悩みや問題を解決するには、企業や社会で暮らす私たちが歩み寄り改革していかなくてはなりません。まずは身近なところから、性差による偏見に左右されない明るい社会の実現に向けた取り組みをスタートさせてみてはいかがでしょうか。